今年3月、テキサス州オースティンで開催された「SXSW(The South by Southwest)」に、ファッションに特化したカテゴリー「SXstyle(South by Style)」が新設された。
“IT界のパリコレ”とも言われる「SXSW」に、遂にファッション×テックの未来を発信するカテゴリーができたのだ。
FASHION HEADLINEでは、日本からSXstyleに参加したSIMONE INC.のPLANNINGチームが考察するレポートを4回に渡って紹介する。
■SXSWとは ーtwitterやPinterestがアワードを受賞したIT界のパリコレー
年々注目度が高まる「SXSW」は、テキサス州オースティンで毎年春に開催される音楽、映画、ITの複合イベント。87年に地元のライブハウスなどの音楽関係者がライブハウスの閑散期を埋める音楽イベントとしてスタートし、94年に映画とITの部門「フィルム&マルチメディア」が始まった。その後、97年にマルチメディア部門が「インタラクティブ」と名前を変えて独立した。
インタラクティブ部門では、07年にtwitterがインタラクティブ・アワードを受賞して注目を集めて以後、PinterestやFoursquareなどが「SXSW」から輩出され、一躍人気のサービスになったことをきっかけに、“スタートアップの登竜門”というイメージが高まっている。
近年、インタラクティブ部門は受賞したサービスが飛躍的に成長したこともあり注目度が高く、世界中のスタートアップや投資家、ベンチャーキャピタル、広告エージェンシー、マーケターなどが「SXSW」に集結している。15年の来場者数は7万2,000人で、5日間の期間中には膨大な数のパネルセッションやワークショップ、ライブイベント、パーティなどが街の至る所で行われ、まるで町中がフェスティバルだ。ここ数年は、日本からもスタートアップを中心としたIT企業の参加が増えており、15年は出展者、参加者を含め数百名が参加する、人気のイベントになっている。
ファッションのパリコレは、ブランドから送られる招待状を持つ人だけが体感できる、クローズドなイベント。近年、ランウェイショーのライブストリーミングが一般化したものの、アナ・ウィンターと同じ空間を共有できるのは、やはり限られた人たちのみ。一方、「SXSW」はチケットを購入すれば誰でも参加することが可能だ。IT界の大物に直接質問をすることだってできる。誰もが手にすることができる招待状だけをとってみても、ファッション業界との違いを感じる。ただし、チケットの価格は早割で購入しても10万円弱と高額だ。それが余計に、世界中の希望と意欲に満ちた人たちを集めるのかもしれない。
「SXSW」では、インタラクティブ部門だけでも、5日間の開催期間中に約1,100ものセッションが行われる。同日同時間に、50近いセッションが開催される。来場者が専用のアプリで自分の関心度の高いキーワードやカテゴリーのプログラムを検索して、そのセッションやイベントに参加していくのがSXSW流だ。「SXSW」に参加する人は、それぞれ全く異なる体験、発見や学びを得て、それぞれの場所に戻って未来を創っていく人たちなのかもしれない。
「SXstyle」は、07年にアメリカで設立されたDecoded Fashionの働きかけによって今年新たに設けられた。「SXstyle」は、ファッションとテクノロジーの融合を促進するプラットフォームを目指している。今年の主なテーマは、「ウェアラブル・テクノロジー」「3Dプリンティング」「リテール・テクノロジー」など。
SIMONE INC. PLANNINGチームは今回、「SXSW」の膨大なセッションの中から、SXstyleに的を絞ってリサーチを行った。
次回から、この「SXstyle」のレポートを3回に渡り具体的に紹介。いずれのテーマも、ファッション業界とテクノロジー業界が手を携えることで実現可能な、未来を示唆する内容だ。
>次回は、ウェアラブルテクノロジーがファッションに与えるもの。