自然×アート×食、五感を揺らす「北アルプス国際芸術祭」の見どころ――夏の信濃大町アート旅1/3

2017.06.16
2017年7月30日まで長野県の北部に位置する信濃大町にて、「北アルプス国際芸術祭」が開催されています。信濃大町は3,000メートル級の山々が連なる北アルプスの麓にあり、清冽な雪解け水、澄んだ空気に包まれ、古くから「塩の道」と呼ばれる千国街道の宿場町として栄えてきました。この地で「水、木、土、空」、この4つのテーマのもと総勢36組の国内外のアーティストが作品を展開します。初夏の時期、「北アルプス国際芸術祭」を楽しむための、巡り方、見どころを紹介しましょう。


●テーマは「水、木、土、空」


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皆川 明さんがデザインした北アルプス国際芸術祭オリジナルのモチーフ

「信濃大町を訪れてまず感じたのは、圧倒的な水の流れ。この列島を形づくってきた、さまざまな自然の要素の存在でした」と語るのは、北アルプス国際芸術祭総合ディレクターを務める北川フラムさん。芸術祭の舞台は、フォッサマグナの西辺にあたる糸魚川静岡構造線上に広がります。西は広大な北アルプス、東は千メートル級の山々が連なり、山に挟まれた盆地に高瀬川や鹿島川が流れます。作品の設置場所は、ダムや湖、川の源流、山と谷、そして市街地と多様で、「100人100様の、これまで見たことのないユニークな作品が集まりました」と北川ディレクター。その言葉通り、重層的で場の空気を一変させる、機知に富んだ作品を見ることができます。

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透き通るブルーの川の水


●5つのエリアを1泊2日で鑑賞する

作品の設置場所は、1) 市街地エリア、2) ダムエリア、3) 仁科三湖エリア、4) 源流エリア、5) 東山エリアの5つに分けられます。バスツアーも東まわりで1日、西まわりで1日、合計2日あればすべて見られます(1) 市街地エリアはバスツアー外の前後に立ち寄ることになります)。
また、シャトルバス(2) 3) 4) のエリアを巡るバス。1日5便~8便)、シャトルタクシー(5) のエリアを巡るタクシー。1日5便)、レンタサイクルを組み合わせて、自分で計画を立てて巡ることもできます。

まずは、信濃大町駅前にあるインフォメーションセンターで最新情報をチェックして、をスタートしましょう。ここでは、公式ガイドブック掲載のモデルコースのうち、1泊2日のコースに沿って、北アルプス国際芸術祭の見どころを紹介します。


●1) 東山エリア―北アルプスの大パノラマ、山間の小さな集落

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山と谷が複雑に入り組んだ八坂・美麻地区

東山エリアは、北アルプスと信濃大町全体が一望できる「鷹狩山山頂」と、山と谷が複雑に入り組んだ「八坂」に分かれ、合計7作品が鑑賞できます。

まずは鷹狩山山頂へ。展望台に立つと、北アルプスと信濃大町全体が一望できます。「芸術祭のイントロダクションとして、最初にぜひ見て欲しい風景です」と北川ディレクター。

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右)北アルプス国際芸術祭総合ディレクターの北川フラムさん、右)目の南川憲二さん、荒神明香さん

この風景に注目したアーティストグループの“目”は、頂上に建つ古い空き家を《信濃大町実景舎》に変えました。“目”のメンバーである南川憲二さんは、「初めて景色を見て、すぐに『ここでやらせてください』といいました。あまりに唐突かつ、物質的、圧倒的な景色に、出会ってもらいたいと思いました」と話します。作品内で動線に誘われた鑑賞者は、突如としていくつもの不思議な風景に出会います。同じくメンバーの荒神明日香さんは、「遠いのに目前に風景が迫ってくる、目が錯覚するような風景。でも空間自体はゆったりしている。作品巡りではやる心を落ち着かせ、のんびりした気持ちで景色を楽しんでいただいきたい」とコメントしました。

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目《信濃大町実景舎》photo by Tsuyoshi Hongo

同じ鷹狩山の空き店舗で展開される布施知子さんの《無限折りによる枯山水 鷹狩》は、折り紙の概念をくつがえす、圧倒的な造形力に驚かされます。その姿は、まるで生き物のよう。一枚の平坦な紙から生まれる無限の可能性に気が遠くなります。

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布施知子《無限折りによる枯山水》photo by Tsuyoshi Hongo

3世帯しか住んでいない八坂の小さな集落では、スイス出身のフェリーチェ・ヴァリーニさんが空間絵画、《集落のための楕円》を描きました。ゆるやかな坂道を下りると、黄色い線の断片が不規則に目に飛び込んできます。わずかに残る家屋に近づき、ある1点で足を止めると、まるで世界の整合性が一気にとれたかのように、同心円状に広がる幾何学文様が現れます。圧倒的な存在感を示す幾何学模様は、この集落が宇宙の中心であることを示しているかのようです。

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フェリーチェ・ヴァリーニ《集落のための楕円》photo by Tsuyoshi Hongo


「北アルプス国際芸術祭」ガイド―夏の信濃大町アート旅2/3へ続く...
永峰美佳
  • 北アルプス国際芸術祭の舞台は長野県の北部に位置する信濃大町
  • 北アルプスの雪解け水は透き通るブルーの色
  • 山と谷が複雑に入り組んだ八坂・美麻地区
  • 皆川 明さんがデザインした北アルプス国際芸術祭のオリジナルモチーフ
  • フェリーチェ・ヴァリーニ《集落のための楕円》
  • フェリーチェ・ヴァリーニ《集落のための楕円》
  • 目《信濃大町実景舎》
  • 目《信濃大町実景舎》
  • 右)目の南川憲二さん、荒神明香さん、右)北アルプス国際芸術祭総合ディレクターの北川フラムさん
  • 布施知子《無限折りによる枯山水》
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