――ブランドを立ちあげて、13年が経ちました。今でも作品製作時に一番大切にしている想いはなんですか?
まず、本当に自分で作りたいかを考えて「正直にありたい」と思っています。自分で作りたくない物を作るべきじゃないと。みんな作りたい物を作っていると思いますが・・・そこから「どうやってビジネスモデルとして成功させるか?」を僕はトータルで常に考えています。それで作りたい物を作って、お客様に着てもらえたら幸せです。
――中村さんは、産地に足を運ぶデザイナーとして知られています。近年、日本の産地が非常に厳しい状況を迎えていることに対して何を考えていますか?
僕が産地に足を運ぶのは、絵型とかだけでなく直接話すことでパーソナルなキャラクターが入ってきて、商品がフラット(均一)でなくなると思っているからです。そして、地域の伝統手法や感性を上手く取り入れてユニークなものを作り続けているアルティザンを、僕らが商品としてマーケットとどう繋げていくかが大事だと思っています。
商品だけでなく、これまで京都・名古屋・仙台などでワークショップやデモンストレーションをしています。作っている工程などを見て、作品がどうやって作られているかを知れると、もっとファッションが楽しくなるのではないかと思っています。今回の伊勢丹さんの企画でも職人さんに来てもらう予定です。ただ生産効率が良くて、安く作れて、それらしく見えるビジネス・・・それだけでは上っ面になってしまうと感じています。
――ビズビムは長く使える物を追い求めていますが、普遍と消費の関係性についてどう考えていますか?
僕も手探りで答えが分からないところはありますが・・・速く・安い物だけを後に残していったら同じ物だけになってしまうと思います。例えば、僕は色々なヴィンテージをコレクションしていますが、江戸時代以前になるとレディースの物ってほとんど残っていないんですよ。それは素材が悪くてしっかりと作っていないから。だから、僕は男性だけでなく、女性にも履きやすいグッドイヤーのブーツやセルビッチデニムのジャケット・・・しっかりと作りこんだ素材で作った商品を提案したいと思っています。
(2013年秋冬から中村ヒロキ氏デザインによるウイメンズブランド「WMV」の立ち上げが決定している)
世の中が均一化になっているからこそ、僕みたいなことをやっているデザイナーが出来ることはあると思います。それは、トラディショナルな物を今の技術や自分の内側にある感性と上手く融合させて、現在(2013年)に提案出来る物を作り「どう未来に繋げていくか?」だと考えています。
ブランドを立ち上げて13年経ちましたが、今でも13年前の型を少しずつアップデートしているものもあります。それが継続していけるような物作りやビジネスが出来ると良いですね。 年をとってアンチエイジングするより、シワを綺麗に刻む人になりたいと思っています。
――ビズビムの商品が人気アイテムとなり、トレンドの火付け役となった場合はどう想いますか?
普段はファッションのニュースとかも一切見ず、あまりメディアからの情報は入れないよう最小限にとどめています。トレンドの方向で物作りを変えるのは僕の仕事ではないと思っていますし、自分の生きていく、感じるなかで響いたものを出すようにしています。それで、自分が作った物がヒット商品やトレンドになってくれたら、それは「嬉しいな」