「自分の引き出しに好きな事を蓄える」プティローブノアー阿部好世のクリエーションの源を知る【新潟の旅】

2016.07.16
2度目に訪れた新潟は梅雨のまっ只中。降り立った長岡駅でプティローブノアー(petite robe noire)デザイナー阿部好世さんと待ち合わせをして、阿部さんのルーツを辿る短いに出ました。

阿部好世さんが2009年に設立したブランド・プティローブノアーは、日製へのこだわりと、“古いものと新しいものをつなぐ”という考えのもとにものづくりを行って今年で8年目を迎えました。ここ新潟県長岡市には阿部さんが、ものづくりを仕事にしたいと決めた、原点とも言える場所があります。

ー高校時代にはどんな思い出がありますか?

阿部さん: ものを細々と作ることはどうやら小さい時から好きだったみたいで、高校時代に自作のフォトフレームやヘアピンをラッピングして友達にあげたりしていたようです。そこから派生して、将来的にものを作りたい、アパレルの仕事に携わっていきたいと高校生の時に意志を固めたことをはっきりと覚えています。この学生時代には、今の私を築く思い出たくさんあります。

当時、私の尊敬する先輩から「自分の引き出しに好きなことを沢山蓄えていることが、デザインの仕事をしていくためには何よりも重要だよ」と言われたことがあって、その時に自分のアイデアを持つ重要性について考え始めました。それから、“好き”と感情が揺れること、心に引っかかることが大切だと思って、雑誌の好きなページや好きな柄、好きな言葉など気になるものは何でもクリッピングしたり、押しをしたり、意識的に“好き”を収集していきました。集めるだけではなくて、“何故好きなのか”を自分で明確に頭の中で整理もしていました。

そんな自分の“好きなもの”を集めた結果、今現在暮らしている忙しい東京の暮らしの中でも、いつか見た、見渡す限りに広がっていた山林に突然現れた紫色の花畑や、静まり帰る夕方に生い茂る誰もいない森、赤く染まった朝焼けなど、つい忘れてしまっていた、ここで育ったからこそ感じ得た感動がフラッシュバックすることがあります。

yoshiyo
広がる田園風景の中を歩きながら当時の思い出を巡ります。


阿部さん: 東京に出てきて初めて、生まれ育った場所の環境的豊かさに気がつきました。いつも側に自然があることや、水や空気が違うこと、星が綺麗に見えることなど。今、制作でデスクに向かってデザインを考える時は、ふっとそういった「自然」を自分が根底に求めていることに気がつきます。“花のモチーフ”とか、“葉っぱ”とかそういう発想という意味ではなくて、デザインに直結しないもっと深いクリエーションの源になる部分の話です。

歳を重ねると見るものも考え方も変わるけれど、若い時に経験して今もまだ記憶に残っていることって、当時それだけ気持ちが振り切れたということだと思うから大切にしていきたいと思っています。そういうものをこの土地では沢山見てきたし、経験をしてきたと思います。

ー最近は、より地域に根ざしたものづくりに着目していると伺いました。

阿部さん: 考え方としては設立当初からのテーマでもありました。私はそこでしかできない事、その環境で生きている人によって、そこでしか成り立たないものに意味があるのではないかと思っています。

単体で考えれば世の中には既にものが溢れきっているけれど、「本来何故そこでものが生まれたのか?」と、その土地土地というフィルターを通せばものづくりの意味を感じることできると思います。例えば、水が綺麗な土地でないと染色をする上で良い色に染め上がらないとか、ものづくりってそもそもそういうところがあって、だからこそ地場の産業が栄えたりしていますよね。実際にその土地に行けば肌で感じられるその理由も、ものだけで切り取ってしまうと感じにくくなってしまうこともあります。

極論を言うと、そこの地域でしか会えない人を目がけて自分が動いている。または、その相手と関わることで自分も動かされる、そんな感覚です。その人じゃなきゃできない、そこでしかできないものづくりをこれからも行っていきたいと思っています。

ー徐々に拡大している事業ですが、今に至るまでのビジネスプランは昔から思い描いていましたか?

阿部さん: 全くです。高校生の時にどこかの組織には属さずに働いていきたいと決めてから、設立当初は一人でブランドを担っていこうと思っていました。今は、自分に負けない強さを根底に持ちつつも、仕事で関わる方々、自社のチームのメンバーのおかげで一緒に良いものづくりができています。自然と“輪”が広がるように色んな人と人とがつながりで仕事をさせてもらえる事にも大変感謝しています。

お客様には、“どれだけ驚きを与えられるか?”を念頭に置いて、自分も今まで見たことが無いものをつくる、良い意味で裏切られる想定外のものづくりを目指しています。「わ、綺麗」、その一方で「うわっ」と最初は思われるかもしれないけれど、あとからその良さがじわじわ分かってもらえたらいいなと思っています。その両極端が無いと、真の感情は動かせられないと思っています。


7月20日から8月1日まで、伊勢丹新宿本館3階のウエストパーク/プロモーションに、プティローブノアーのポップアップショップ「Circle of pieces ー プティローブノアーからつながるコトゴト」がオープンする。このショップには、プティローブノアーが鎚起銅職人の渡辺和也さんやカフェ・ツバメコーヒー、G.F.G.S.など新潟に根付く職人や企業とコラボレーションしたアイテムがそろいます。

イベント情報】
「Circle of pieces ー プティローブノアーからつながるコトゴト」
会期:7月20日~8月1日
場所:伊勢丹新宿本館3階のウエストパーク/プロモーション


次はG.F.G.S.代表の小柳雄一郎さん×阿部好世さんの対談へ。
目次へ戻る。
Iori Ihara
  • プティローブノアーデザイナー阿部好世さん
  • 故郷、新潟の田園風景にはクリエーションの原点が詰まっていました。
  • プティローブノアーデザイナー阿部好世さん
  • プティローブノアーデザイナー阿部好世さん
ページトップへ