石黒望による「ノゾミイシグロ オートクチュール(NOZOMI ISHIGURO Haute Couture)」のショーにはいつも何かを期待して赴く。3月15日、ラフォーレミュージアム原宿で開催された14-15AWコレクションショーは久方ぶりにエキサイティングなプレゼンテーションを見せた。
ここ数シーズンは通常のランウエイを見せており、屋形船や麻布十番の高級クラブを貸し切って発表していた頃に比べ物足りなさを感じていた。しかし今回は違う。不破大輔率いるバンド「渋さ知らズオーケストラ」を従え、“ショー”というより“ライブ”で服を披露したのだ。シートは無く、観客は全員スタンディングでライブハウスといった体。同ブランド14-15AWアイテムを着たバンドマン達がそろった後、バイオリン伴奏の独唱と共に“ランウエイライブ”はスタートした。
発表されるウエアはいずれもブランドらしい、ランダムかつ複雑な造形と切り替えがなされた一群。スカートとパンツがドッキングしたようなボトム、スリットから別生地が覗き2重になったようなスカートなど面白い。袖口からバックヨークを通り袖口までジップが施されたライダースジャケットは初期の頃にも見られたアイテムで懐かしい。
今回のポイントはタックを二つ畳んで形作られたアイテム。ブルゾンは袖がリボンのように垂れ下がり、可愛い。またガーゴイルのような角が生えたファニーなフードブルゾンも登場。いずれも肉厚な生地でボリューミーだ。
ゆとりがあるシルエットのテーラードジャケットは裏を表に見せた仕様。見返しから切り替えられるボディにはフリルテープが施され、ゴージャス。主にバンドマンが着用していた。
素材では毛足の長いブランケットのような生地を赤・黒・灰でマーブルに染めた生地が目を引く。ブルゾン、スカートなど様々に用いられ、血糊のようなリップメイクと共に不穏な方向に思いを巡らされる。その他にはジャカード、ラメ生地、チェックなどが使用された。
ライブは歌唱の後、白塗りのダンサーが登場してのシャーマニックなパフォーマンスと続き、フィナーレに。「楽しんでくれた?普通のショーじゃつまんないじゃん」との石黒のコメントを思い出した。