【PRESSブログ】アートとファッションにおいてコラボレーションという意味を考える

2013.02.13

ファッションのニューストピックに、コラボレーション企画が上がらない日はない、というくらい「コラボレーション」という手法が主流化しています。

メゾンとメゾンが手を組んで限定コレクションを発表する、或いは特定ブランドの製品を別ブランドのデザイナーカスタマイズする。この「ファッション×ファッション」のコラボレーションから、アーティストの作品をアイテムに取り入れたり、彼らにウインドーディスプレイを任せるといった「ファッション×アート」のコラボレーションも絶えません。

かたちはさまざまですが、当に意味のあるコラボレーションは限られているように思います。「ファッション×ファッション」の場合は、お互いのできないことを補い合う関係でなければ協業する意味がないですし、「ファッション×アート」の場合は、お互いが刺激し合うことで誰も見たことのない新しい「モノ」、或いは「コンセプト」が出来上がらなければ意味がありません。

「ファッション×アート」の領域横断的なコラボでは、2002年に行われた村上隆×ルイ・ヴィトンコレクションでインパクトのある試みが行われました。それまで見たことのない規模で展開されたこのコラボレーションは、当時とても新鮮に映りました。アーティストにとってもメゾンにとっても、コラボレーションという考え方を「新しいコンセプト」として提案しつつ普及させた画期的な例だったと思います。

この流れを受け、「ファッション×アート」のコラボはさまざまな規模でその後どんどん増えていきました。ただ、最近ではコラボレーション自体が目的となってしまい、そこには新しいコンセプトも考え方も見えず、村上隆とルイ・ヴィトンの時のような新鮮さもインパクトも感じなくなってしまいました。

そんな中で、新しいコラボレーション方法を試みているのが、アテネをベースに活動するデステ ファウンデーション (Deste Foundation)です。彼らは、毎年一人のアーティストを取り上げ、ファッションをテーマにした作品を制作させる「デステ・ファッション・コレクション」というプロジェクトを2007年から立ち上げています。

「ファッション×アート」の多くがアーティストの力をファッション側が取り込んでいるのに対し、アート側からファッションを捉え直す試みをしているのが、このプロジェクトの特徴です。

昨夏には、ニューヨークのバーニーズでのウインドーディスプレイでこのコレクションが紹介され、話題になりました。主流のコラボレーションとは違った考え方のコラボレーションで、百貨店のウインドー企画としても、一歩前に出た取り組みだったように思います。インパクトに欠けるコラボレーション企画があふれている中で、このプロジェクトには「新しいコンセプト」の提案を感じます。

日本でも、この3月に伊勢丹新宿店美術手帖の協業企画で、アートとファッションを融合させた書籍の出版に加え、「ファッション×アート」のウインドーディスプレイが企画されています。

「ファッション×アート」のコラボレーションについて、新しい考え方を提案してくれる、一歩前に出た企画を見せてくれるのか……実はとても楽しみにしています。
Maya Junqueira Shiboh
  • バーニーズニューヨークのウインドーで行われたディスプレイ。Helmut Lang Front Row, 2009, at Barneys New York window display in 2012.
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