各ブックストアがFASHION HEADLINE読者に向けて「今読むべき1冊」をコンシェルジュ。毎週木曜日は、アート・ブックショップ「ナディッフ(NADiff)」各店がオススメする1冊をご紹介。今回は東京・渋谷の支店 NADiff modern(東京都渋谷区道玄坂2-24-1 Bunkamura地下1階)です。
■『国芳イズム―歌川国芳とその系脈 武蔵野の洋画家 悳俊彦コレクション』
本書は、4月10日まで練馬区立美術館にて開催中の「国芳イズム―歌川国芳とその系脈 武蔵野の洋画家 悳俊彦コレクション」の展覧会図録を兼ねて制作され、出展作品の全点を掲載する。悳のコレクションは、国芳の浮世絵のみならずその門人や小林永濯、尾形月耕、山本昇雲など国芳の系統とは違う絵師たちにまで及び、幕末・明治期の浮世絵界、風俗画界にとって国芳という存在がいかに大きなものであったのかを窺い知ることができる。
国芳は武者絵でその名を広く知らしめる一方で、影絵や寄せ絵・嵌め絵、動物や植物、器物を擬人化したものなどのバラエティーに富んだ戯画をはじめ、陰影の付け方に洋風画の表現技法を取り入れた風景画など、常に新たな表現を模索し続けた。流行や社会情勢に敏感であり続け、改革、禁令などの制約の中にあっても新機軸を打ち立ててきた国芳の仕事があってこそ、それを引き継いだ次世代の絵師たちの展開がある。
国芳の絶大な影響力は当時の絵師たちの間だけにとどまらない。実在した侠客らをモデルとし、歌舞伎などに登場する「ならず者」を描いた武者絵や、表情豊かで躍動感溢れる群像表現からは、任侠ものに憧れるヤンキー文化や、アニメーションなどで用いられる「モブシーン」の表現など、現代の日本人にも通じるルーツを感じとることができるだろう。
3月19日からは新たに、Bunkamura ザ・ミュージアムにおいて「ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞」が開幕。本展では、兄弟弟子でありながら対照的な作風で国芳と共に一世を風靡した歌川国貞の作品と併せて展示することにより、江戸のポップカルチャーであった浮世絵の世界を体感することができる。
【書籍情報】
『国芳イズム―歌川国芳とその系脈 武蔵野の洋画家 悳俊彦コレクション』
著者:練馬区立美術館
監修:悳俊彦
出版社:青幻舎
ソフトカバー/276ページ/B5変型
発刊:2016年2月
価格:税込2,700円
【展覧会情報】
「国芳イズム―歌川国芳とその系脈 武蔵野の洋画家 悳俊彦コレクション」
会場:練馬区立美術館
住所:東京都練馬区貫井1-36-16
会期:2月19日~4月10日
※会期中展示替えあり。(展示替え日程:3月14日、3月28日)
開館時間:10:00~18:00(入場は閉館の30分前まで)
料金:一般800円、高校・大学生および65~74歳600円、中学生以下および75歳以上無料、障害者(一般)400円、障害者(高校・大学生)300円、団体(一般)600円、団体(高校・大学生)500円、ぐるっとパスご利用の方300円(年齢等による割引の適用外になります)
休館日:月曜日(ただし、3月21日は開館、翌22日休館)
「ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞」
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
住所:東京都渋谷区道玄坂2-24-1地下1階
会期:3月19日~6月5日
開館時間:10:00~19:00(金・土曜日は21:00まで、入場は閉館の30分前まで)
料金:一般1,500円(前売り・団体1,300円)、大学・高校生 1,000円前売り・団体800円)、中学・小学生 700円(前売り・団体500円)
※障害者手帳のご提示で割引料金あり。詳細は窓口でお尋ねください。