10月20日から3日間、日本最大のファッション総合展「ファッションワールド 東京 2014秋」(リード エグジビション ジャパン主催)が東京ビックサイトで開催された。出展社数は昨年比250社増の610社、来場者は約3万人を見込む盛況振りとなった。
展示会の目玉となる特別セミナーでは、22日に三越伊勢丹執行役員紳士・スポーツ統括部長の近藤洋が登壇。消費における価値観が多様化する中で、顧客感心の重要性について触れながら、伊勢丹メンズ館の立ち上げ背景から今後の戦略について語った。
「今は、自分の好きなものにはこだわり、それ以外は無駄を省くという消費の二極化が進んできている。2000年以降、他の百貨店では紳士の売り上げが低迷する中、伊勢丹は売り上げを伸ばすことが出来た。それは、顧客創造をして様々な仕掛けをしてきたから。当時、紳士売り場では女性の代理購入が多かったが、ファッションに関心が高く、自ら商品を選んでコーディネートすることが出来る男性の潜在ニーズを想定。男性が選ぶ店づくりを目指し、2003年に“男である幸福”をコンセプトにしたメンズ館をオープンした。ブランドの壁を取り払い、世界最高峰のファッション、こだわりの品を取りそろえ、今までにないメンズコスメやメンズアクセサリーの売り場といった、お客様の“思ってもみなかった”“あったらいいな”(という潜在ニーズ)を幅と奥行をもって提案してきた」
更に近藤氏は、オープン1年後に、売り上げは伸びていたが新規顧客が40%増えたのに30%流出してしまっていたことについても言及。2007年には、“ウェルネス”や“趣味”をテーマにメンズライフスタイルフロア(8階)を設け、スパやカフェ、男の趣味・書斎をイメージしたライブラリーのコーナーを新設するなど、リニューアルを進めた。
「何度でも売り場に足を運んでもらえるような仕掛けとして、“心の豊かさ”に着目した。日本の技術が詰まった良い品を集め、“日本”の良さを再発見できるような新しい価値を提案するということ。また、お客様間の価値共有のきかけとなるよう、元プレイボーイ編集長の島地勝彦氏によるバー『サロン ド シマジ』をオープンした。これによりファッション、シングルモルト、シガーといった男の憧れのライフスタイル、彼の生き方に共感する人が集まるようになった。これからもメンズ館って面白いって思っていただければ」と述べた。
これからのメンズファッションビジネスの方向性、伊勢丹メンズ館の今後の課題について、「これから次の10年、価値観の変化(スペンドシフト)に対応するには、ニーズ対応ではなく、“これが欲しかった”と思わせるようなウォンツ対応の品ぞろえを実現し、心が豊かになる共感価値を創出し、伊勢丹メンズ館のファンづくりのマーケティングへの転換が必要。インナーブランディングによる、“これが伊勢丹メンズ館だよね”という価値共有を行ってもらえるように、人・生きざま・生き方までを表現できるような“存在”、チャリティイベントなどの心の表れ方としての“活動”、モノ・コトだけではなく、作り手の思いまで伝える“作品”を軸に取り組んでいく。日本の優れた製品に込められた和の精神気質は、グローバ ル戦略の際に強みにもなる。常に一歩先を読み、新しい情報を発信して挑戦し続けていく」と話した。
同展示会では他にも、パルコ代表執行役社長・牧山浩三、バーニーズジャパン代表取締役・上田谷真一、ビームス取締役副社長・遠藤恵司、アーバンリサーチ専務取締役・竹村圭祐による基調講演が行われ、メンズバイヤー達が熱心に耳を傾けていた。
なお、今回会場では世界中のハイファッション商材が一堂に集まる特設エリア「PLUS+ ハイファッション ゾーン」が新たに設けられた。メンズでは「サルヴァトーレ ボサ(SALVATORE BOSA)」のシャツや「ミハラヤスヒロ(MIHARAYASUHIRO)」の靴、ウィメンズでは、「ジュリアン・ヘイクス(Julian Hakes)」の“底のない”デザインで話題となったユニークなシューズや、日本初上陸の韓国ブランド「BRHAS PATI」などが注目を集めていた。その他、アパレル、アクセサリーやシューズ、バッグなどの出展ゾーンでも、熱心に商談する姿が見られにぎわいを見せた。