アート作品における数ある技法の中に、細い紙を丸めたものを多数集めてひとつの作品を完成させる「クイリング」という技法がある。ルネサンス期の修道士たちが編み出し、後に19世紀の貴族女性たちが発展させたものといわれている。アメリカ・マサチューセッツ出身の女性アーティスト、リサ・ニルソン(Lisa Nilsson)はこのクイリング技法に和紙を用いるという意外な方法で作品を生み出し続けている。
圧巻という一言がふさわしい彼女の代表作でもある“Tissues”というシリーズは、和紙のクイリングで人体の解剖図を表現したもの。人の内蔵や組織が和紙を丸めたモノで表現され、枠内にぎっしりと詰め込まれた作品からはグロテスクさもあるが美しさを感じることができる。リサ曰く、手染めされた和紙は色のバリエーションが豊富でプロジェクトにぴったりだったとのこと。また布地のように扱いやすく密度の高い仕上がりを可能とさせる点もお気に入りのようだ。ある日リサイクルショップでアンティークのクイリング作品を見かけた際に、以前手がけた“Boxes”というプロジェクトで使っていた素材と技法をクイリングと組み合わせたら面白くなるかも、と思いついたという。
リサはこのシリーズを通して、人体というテーマを取り扱ってアート作品の官能的な快楽とグラフィックとしての強さを組み合わせること、科学的な標本への詳細なアプローチ、そして聖骨箱の持つ畏敬の念に満ち信心深い性質の表現を目指したのだそうだ。
最近では“Tapis Series”と名付けたカーペットの模様を和紙のクイリングで表現したシリーズも展開しており、こちらも“Tissues”とは違った魅力を味わうことができる。彼女の作品は、ニューヨークのPAVEL ZOUBOK GALLERYで取り扱われており購入も出来るそうだ。
※本記事は (引用元: http://lisanilssonart.com/home.html) に許可を得て、翻訳・執筆を行っております。