第5回目となる「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭(以下KG)」が4月14日よりスタートした。2013年よりスタートし、これまでの来場者は25万人を数え、ゴールデンウィーク期間中も開催される同展は年々規模を拡大。京都の歴史的建造物などを会場に16会場で行われている。昨年より1週間早くスタートしたことで桜がまだ残り、初日から日本人だけでなく、多くの海外のツーリストがパンフレットを片手に会場を回る姿が目立った。
2017年のテーマは「LOVE」。主要会場の一つ、烏丸御池にある元・新風館の外壁にスーザン・バーネット(Susan Barnett)が世界中で撮影した「LOVE」モチーフのTシャツ女子の写真が野外展示(無料)され、館内では吉田克人などの作品展示とともに、インフォメーションセンターを設置。今回のメインスポンサーであるBMWモビリティ体験プログラムとして、BMWのレンタサイクルや電気自動車「BMW i3」の貸し出し(土日祝のみ)も同館で行われている。
同展を第1回目から協賛しているシャネルは、日本では2002年以来となるロバート・メイプルソープ(Robert Mapplethorpe)の本格個展を、東京のシャネル・ネクサス・ホールの巡回展として開催。建築家のピーター・マリーノ(Peter Marino)が所蔵する5点のプラチナプリントを含む全91点の作品が、誉田屋源兵衛 竹院の間で展示されている。このイベントは無料公開となっているので、期間中に京都を訪れるなら是非立ち寄りたい。
また同会場奥の黒蔵では、昨年スペインの国立写真賞を受賞したイザベル・ムニョス(Isabel Munos)の国内初個展が行われている。二つのシリーズで構成され、ゴリラやチンパンジーを被写体にした「Family Album」と共に、これまで公開されていなかった天空八画の間で行われている「Love and ecstasy」は衝撃的だ。
誉田屋源兵衛の西にある無名舎では、昨年のKGのサテライトイベント「KG+」でグランプリを獲得した香港出身のヤン・カレン(Yan Kallen)が個展を開催。4ヶ月に渡り京都に滞在して制作した作品を展示している。現在も居住スペースとして使用され、普段は公開されていない京都の伝統的な町屋を、“光と闇のはざま”のテーマで構成したインスタレーションとなっている。写真とともに展示されている京都の伝統工芸師がカレンと協作したカメラ・オブスキュラ(写真鏡)が、作品の要となっている。
アメリカを代表するポートレートの巨匠アーノルド・ニューマン(Arnold Newman)の没後初の国内回顧展は、二条城 二の丸御殿台所と東南隅櫓で行われている。ピカソやJFケネディ、マリリン・モンロー、ダリ、ストラビンスキー、サーリネンなど、多岐のジャンルに渡る著名人を独自の空間構成で切り取ったポートレートはアメリカ文化そのもの。重要文化財である空間での展示はKGならでは。アンディ・ウォーホルのポートレートとともに、彼がペインティングしたBMWのレーシングアートカーが二条城の御殿台所にあるのは不思議な光景だ。
KGではレギュラーの会場となった嶋臺ギャラリーでは、オランダ人女性写真家ハンネ・ファン・デル・ワウデ(Hanne van der Woude)のドキュメンタリー作品を公開。然花抄院のカフェ奥にあるギャラリー素形(無料)では、1867年に来日した初代駐日イタリア大使夫人の子孫にあたるシャダ・リパ(Giada Ripa)が近年日本で撮影した日本人のポートレートを、夫人の旅行記と19世紀の報道写真家フェリーチェ・ベアト(Felice Beato)の風景写真とともに会場が構成されている。
建仁寺塔頭の両足院では、荒木経惟が昨年パリで発表した「机上の楽園」を「机上の愛」と改題し、日本初公開。机上で撮影された静物を禅寺の庭を背景に会場が構成されている。離れの茶室にも書の軸が掛かる。
建仁寺からほど近い祇園の縄手通りにあるASHODELでは、話題のアートマガジン『TOILETPAPER』が、彼らの世界を堪能できるインスタレーションを展開している。1階を物販スペースに、2、3階では写真、グラフィック、インテリアなどで、その色彩の渦を体験できる。
また祇園と並ぶ飲み屋街の木屋町に出来た新しい空間のFORUM KYOTOでは、ザネレ・ムホリ(Zanele Muholi)が作品展「黒き雌ライオン、万歳」を開催。南アフリカ共和国のヴィジュアル・アクティヴィストのムホリは、黒人女性の立場でレズビアンを表明しており、セルフポートレートのシリーズは圧巻だ。
それ以外にも京都文化博物館別館でラファエル・ダラポルタ(Raphael Dallaporta)が360度撮影した3億6,000年前の洞窟の映像インスタレーションを1階で開催。2階ではスイスの写真家ルネ・グローブリ(Rene Groebli)の1954年の作品が、併設されているネスプレッソラウンジとともに無料で公開されている。
また二条城の東にある堀川御池ギャラリーでは、沖縄出身の山城知佳子の個展、御所西側の虎屋京都ギャラリー(無料)ではフランスギメ東洋美術館のコレクション展示されている。
さらに4月26日からはJR京都伊勢丹7階の美術館「えき」でアニエスベー フォトコレクションが開催される。アニエスがコレクションしたアートコレクションから自身がセレクトしたアンリ・カルチェ=ブレッソン、ジャック=アンリ・ラルティーグ、ナン・ゴールディン、ライアン・マッギンレーなど70点が展覧される。
また、サテライトイベントでは伊島薫の巨大ヌード作品が染め工場をリノベーションして新しく誕生した京都場で公開(無料)。京都を代表する伝統的な京町屋の野口家住宅花洛庵、元淳風小学校、京都御苑閑院宮邸跡レクチャーホール、吉田寮、頼山陽山紫水明處など、さまざまな会場でGWの期間中を含め開催されている。
【イベント情報】
「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2017」
会場:京都市内16会場
会期:4月15日~5月14日
料金:パスポート一般3,000円(美術館「えき」を除く全会場に会期中1回のみ入場可能)、一般プチパスポート(美術館「えき」を除く3会場/1日のみ有効)1,500円、学生(大学・高校・専門生)2,000円
*サテライトイベントKG+は会場により別途料金が必要な場合あり
Text: Tatsuya Noda