芸術の秋、ということでもないが、今週からスタートした東京ファッションウィークの前に、京都で気になっていたアートイベントをいくつか回ってきた。
まず、京都国立近代美術館で10月27日まで開催されている「映画をめぐる美術---マルセル・ブロータースから始める(Reading Cinema,Finding Words: Art after Marcel Broodthaers)」展。詩人でもあったベルギー出身の芸術家マルセル・ブロータースが始めたのは、映画を書くための表現方法として位置づけたこと。映画を「視る」ことから「読む」ことへ意識転換させる創作活動が、1990年代以降の写真やヴィデオ、インスターレーションを理解する上で重要な手がかりになるという視野のもと、エリック・ボードレール、シンディ・シャーマン、アンリ・サラ、アイザック・ジュリアン、ミン・ウォン、やなぎみわ、田中功起など12名のアーティストによる作品が紹介されている。
ファッションと直接的に関係する作品は今回出品されていないが、「視る」ことから「読む」ことへ、言語とイメージで解読させるデザイナーが増えているのは、モードの世界も90年代以降の美術シーンと同じ。シンディ・シャーマンの作品とトーガに共通する視点を思い出したり、大好きな京都国立近代美術館で久しぶりにゆったりした時間。来年4月22日から東京国立近代美術館でも開催される。
以前から出町柳という場所は、京都のサブカルチャーを語る上で外せないエリア。近年は京都精華大学、京都造形芸術大学などユニークな講義を行う学校が増えたこともあって、ハブステーションとなる出町柳駅周辺に面白い店が増えている。60年代学生運動の頃の京大や同志社大の学生運動の空気を残している鴨柳アパートメントの一室に週末だけオープンする本屋「NOT PILLAR BOOKS」へは買い物に。
この本屋さんが自主レーベルの第1弾として発行した京都のグラフィティアーティストNAZEの『I know nothing of your bygone days…』が欲しくて立ち寄った。スペシャルエディションは50部限定でA2のステンシルポスター付き。入荷時は、ラッカーの匂いが部屋中に充満していたそう。店内は、その圧倒的な本のセレクトにしばし呆然。大プッシュのERECT Magazineから、HAMADARAKA、EIZAKI AIという東京アーティストから、伊勢丹新宿店のリモデル時に配布された「INTO THE FUTURE」でピックアップされたヴィヴィアン・サッセン、マッシモ・レアルディーニといった、モード誌でも注目されるカメラマンの写真集まで。ネットでも買える時代とはいえ、こういった本屋さんが意外な場所に増えているのは、楽しい。
そして、そこから歩いて3分のトランスポップギャラリーへ。LAのコミック作家「ジムウードリング展」が20日まで開催なので。ヨラテンゴとコラボのソフビが予約受付中などと言っても、女子に引かれるだけですので、ご注意を。このギャラリーはあらためて紹介したいので、今回は画像なしで。
最後に京都のパワースポット神泉苑の西にあるギャラリー110へ。今年7月にオープンしたファッション専門のギャラリー。行われていた企画展「コロモガエ:Tシャツ編」は、来場者が持参したTシャツにメッセージを付けて、展示されているなかのTシャツと交換するというリサイクルプロジェクト。2000年頃に中川正博が20471120で行っていたプロジェクトに近いが、当時に比べ出品されているTシャツのクオリティ、記号としてのブランドの変遷に日本の服飾史が見え、興味深かった。
【イベント情報】
映画をめぐる美術---マルセル・ブロータースから始める(Reading Cinema,Finding Words: Art after Marcel Broodthaers)
会場:京都国立近代美術館
住所:京都市左京区岡崎円勝寺町
会期:10月27日まで
時間:9:30から17:00まで(金曜日と10月26日は20:00まで)
入場料:一般850円、大学生450円、高校生以下無料