――あなたはクリエーションだけでなくビジネスの側面にもきちんと目を向けておられます。そのバランスはどうやって取っているのでしょう?
ビジネス的に成立していなくては、車があっても道がないようなもの。デザイナーである以上は、やはりビジネスのことを考えないといけないと思います。運良く4、5シーズン続いたとしても、それでは意味がありません。
だから、私は最初からビジネスも念頭に置いて、様々なバリエーションを用意します。ちょっとアーティスティックでクリエーティブなもの、いわゆるプレス受けするアイテムと同時に、一般の人にも手の出しやすいアイテムをそろえたり、ということです。
――コレクションピースだけでなく、すべてにおいて「ロバート・ゲラー」らしさを表現するにはどうやって?
色だったり、ベーシックなTシャツのディテールだったりでしょうか。ちょっと凝ったジャケットでロバート・ゲラーらしさを出すのとは違います。ブランドを続けていくと、ブランドらしさを、すべてのアイテムでどのように表現するかを意識するようになります。
例えば、とてもソフトなフリースをグラデーション染めしたスウェットがあるんですが、アメリカやカナダでは、このアイテムがロバート・ゲラーだと皆、知っています。シーズンごとにカラーリングを変えたりしながら定番アイテムとして出しているのですが、どのショップでもすぐに売れてしまうようです。それが「シンプルだけど美しくて、皆が欲しがるような服」につながっています。
――日本でのこれからのビジネス展開については、どのようにお考えですか?
日本の男性は世界のどこよりもファッショナブル。初めて来日した時、日本人の男性がこれだけ服に興味を持っているということに正直、とても驚きました。4、5人の男の子のグループを見たんですが、1人は完璧なパンク、1人は完璧なテディボーイ、1人はトラッドと、全員違うスタイルですが、それぞれ着こなしはパーフェクト!日本人の「深く追求していく」という気質を見た気がします。
そんな日本ですから、早くからロバート・ゲラーが認知され、今はアメリカの次に日本が大きな比重を占めています。日本のいろいろなショップとも、ブランド設立時から良い関係を築いているので、これからますます繋がりは強くなるんじゃないかと思います。
――レディースの展開は考えていますか?
何となくぼんやり、そのうちにとは思っていますが(笑)、ロバート・ゲラーのウイメンズ版にはしたくないんです。メンズのデザイナーがちょっとシルエットを変えてウイメンズに置き換えたというようなコレクションもありますが、私はやはり、まったく別のものをきちんとクリエートしたいですね。
――すでに2014年のコレクションに取りかかっている時だと思いますが、どんなものになりそうですか?
あまり詳しくは言えないのですが、東ヨーロッパやロシアにインスパイアされたものとだけ言っておきます。お楽しみに(笑)。新しいシーズンを始めるのはすごくリフレッシュしていいですね。何かまた全然違うところから物を見ることができて。シーズンを通してロバート・ゲラーのエッセンス、美学は共通していますが、シーズンごとのテーマによってその表現が違うんです。同じ言語ではあるけれども、いろいろな表現ができるようになっていくのと同じことです。
――コレクションはご自身のルーツが反映されているようですが、NYで活動する理由とは?
コレクションのテーマはヨーロッパがバックグランドになっていますが、私の暮らしのベースはNYで、妻はブラジル人。現地で友達10人と食事に行くと、8人はそれぞれ国籍が違う。そうやって、違う国籍の人、カルチャーに触れることはとても大切なことだと思います。世界中のものをブレンドした空気がNYにはあると思っています。