三越伊勢丹石塚会長、プレミアムアウトレット山中社長ら語るインバウンド2000万人時代

2014.01.29

ショッピングセンター(SC)協会が1月22日から24日、パシフィコ横浜で第38回日本ショッピングセンター全国大会を開催した。今回、SC協会設立40周年記念としてシンポジウムが行われた。

2日目には「市場拡大を見据えた、これからのインバウンド戦略」をテーマに松山良一日本政府観光局理事長、石塚邦雄三越伊勢丹ホールディングス代表取締役会長、山中拓郎三菱地所・サイモン社長をパネリストに、篠原一博日本SC協会専務理事がコーディネーターとしてシンポジウムを開催。「訪日外客2000万人時代に向けて」をテーマに、松山氏からSC業界のインバウンド対応に関して基調講演が行われた。

国際旅行者は2012年に10億人を突破。2010年から2020年の10年間に年率3.8%の成長率を見込み、2020年に13億6,000万人となると予測されている中で、観光立国としてインバウンド対応の遅れている日本の現状を分析。13年12月に1,000万人を超えた訪日外客はLCCの運行拡大、ASEAN、インドなどの新興市場の海外行需要の増大などで、国の成長戦略の柱として観光産業の重要性をリポート。現在の日本における旅行消費額に占めるインバウンドのシェアが6.6%と韓国47%、仏30%、英国18%などと比べて低いことからも、今後、海外旅行客のSCでの消費の伸び代が日本の観光産業の重要な要素となると分析。

三越伊勢丹基幹3店舗の免税売り上げ前年比2倍、売り上げ上位にイッセイミヤケコム デ ギャルソン

続いて石塚邦雄・三越伊勢丹HD会長が、訪日外国人百貨店免税の推移と三越伊勢丹の現状を数字を元に解説。「百貨店協会の発表数字でも2013年に入り、客数の伸びより免税の売り上げが毎月前年比20%程度伸びで上回っている。2013年の訪日外国人全体の内、中国人は客数で92.2%と前年を下回ったが、三越伊勢丹百貨店の基幹3店舗では客数で179%、免税売り上げ205%と前年比2倍近くの伸びを示している。(基幹3店舗の免税売り上げのシェアの)約50%が中国からの旅行客が占めている」と状況を説明。

免税の売り上げは伊勢丹新宿店が約72億円(前年比191%)、三越銀座店は約28.5億円(同206%)、三越日本橋本店が約10億円(同176%)と高い伸びを見せているものの、伊勢丹新宿店単独でとらえても、免税の売り上げシェアは全体の3%と、ギャラリーラファイエット本店の30%、ハロッズ本店の15%など海外の百貨店と比べて依然低レベルだと分析。伊勢丹新宿店の免税売り上げベスト10ブランドの上位にはイッセイミヤケ、コム デ ギャルソンなどの日本のブランドが入っており、「今後日本ブランド、日本製品を訴求していくことと海外店舗との連携がSCのインバウンド強化の上で重要だ」と、その戦略を説明した。

また御殿場、酒々井などのプレミアムアウトレットを展開する三菱地所・サイモンの山中拓郎社長が、全プレミアムアウトレットのインバウンド団体客は2013年で36万人(前年比159%)に達したと発表。国別の順位(シェア・前年比)は1位タイ(25%・173%)、2位中国(20%・97%)、3位台湾(16%・204%)、4位香港(15%、197%)、5位インドネシア(8%・210%)で、特に御殿場の2ケタ成長の30%は外国旅行客の増加を要因と挙げた。その売り上げは全体の約10%を占めており、「今後、団体客から個人旅行客が増えることが予想され、それに伴いホテル業界は勿論だが、SC、百貨店、交通機関などに大きな影響を与える」と話し、既にムスリムの旅行客に向けて礼拝堂設置や食事メニューの表記対応、多言語対応のスマートフォン対応などで、先行する同社のインバウンド対応を解説。

「訪日外国人が1,000万人から2,000万人になるというのは、単にこれまでの数字が2倍になるというのではなく、百貨店でみれば免税客数は3から4倍に、免税売り上げは5から6倍になることが予想される。そのためのオールジャパンでのインフラ整備が必要だ」と石塚会長は指摘した。

「SCは今後日本における重要な観光資源となりうる」という篠原専務理事の総括と共に、そのためには「現在、外国人観光客が日本を訪れる目的の上位に挙げる飲食、小売業を観光立国の仲間に」「欧米と競争できる免税制度の整備が必要」「外国人顧客の固定化に向けたマーケティング活動」「交通システムのインバウンド対応」など各パネリストから提言が行われた。
編集部
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  • 第38回日本ショッピングセンター全国大会会場風景
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