ジェトロ(日本貿易振興機構)と日本ファッション・ウィーク推進機構は「タイアパレルマーケットセミナー」を開いた。タイを中心とするアセアン市場の販路開拓・輸出拡大を目指す中小アパレル企業を対象としたもの。
ジェトロの若松勇海外調査部アジア大平洋州課長、サイアムピアット(Siam Piat)のチャンチャイ(Charnchai C. Wongthanakorn)副社長、伊藤忠ファッションシステムのブランディング第2グループブランドクリエーションビジネスユニット河合秀彰の3人が講師になり、生産地としてだけでなく、消費市場としても期待されているタイとアセアン経済動向やバンコクのファッション市場について話した。
河合氏はタイのファッション市場の現状を「堅調に成長している。個々のスタイリングを楽しむなど、おしゃれで、ファッションへの関心と消費意欲も高い。2012年に最低賃金が引き上げられたことが影響し、縫製工場がミャンマーやカンボジアなどに流出しているが、ブランド展開などによって付加価値の高いビジネスへとシフトしている。タイにはストリートやナチュラル系カジュアルはそれほど存在しないし、感度の高い商業施設や日本ブランドを求める企業や消費者がたくさんいる。メンズのストリート系にも可能性がある」と説明。
その上で、日本のファッションブランドに求められるタイ市場での戦略について「タイ、バンコクには路面店がほとんどない。そのため、サイアムピアットやセントラルデパートメントグループといった大手3社など、すぐれた商業施設を持つディベロッパーやそこにテナントを出店している企業とパートナーになることが重要だ。競争が激化する中で、バンコクの小売企業とのネットワークを持つすぐれたエージェントを獲得できるかどうかが鍵になる。また、タイの消費者は海外で評価を得たものを好む傾向が強い。企業もパリのトラノイ、イタリアのピッティ・イマージネ・ウォモ、ニューヨークのカプセルなどを訪れている。ハイエンドブランドにとっては欧米の有力見本市への参加もタイ進出につながる」と話した。
また、チャンチャイ副社長は「中間層は現在全体の44%だが、今後5年で70%まで拡大すると予想されている。小売業やファッションマーケットは更に拡大するだろう。タイへの進出は企業やブランドをASEANに売り出すきっかけにもなる」と強調した。