東京・立石にある、真宗大谷派の寺院・證願寺(しょうがんじ、葛飾区立石7-11-30)が秘かな人気を呼んでいる。人気の秘密は、寺院でありながら、世界的にも珍しいプラネタリウムが併設されているという。
館長を務めるのは、同寺院の第17代住職の春日了氏。声楽家、奇術師としても活躍する同氏は、1988年から1995年にはテレビ朝日の番組「CNNデイウォッチ」を始めとする各局テレビ番組でキャスター、コメンテーターとしても活動していたので、その名に聞き覚えがあるという人もいるだろう。
同寺院の歴史は、1600年に上杉民部之輔の3男である證願が湯島に創建したことに始まり、明暦の大火での浅草移転を経て、関東大震災の影響による区画整理によって1932年に現在の地に移転。1996年には、本堂と繋がるビル庫裏に「プラネターリウム銀河座」を開設し、月2回の上映の他、法話も館内で行っている。
「プラネタリウム」ではなく「プラネターリウム」とした理由は、「planetarium」のアクセントを正確に表記したかったから。6ヶ国語を操り、9ヶ国語で歌う春日さんならではのこだわりの表れだ。
一般公開している月2回の上映会では、毎回異なるテーマで、宇宙や星空の魅力、天文学者の逸話から、古事記と西欧の神話比較などまでを聞くことが出来る。解説は、彼と女性解説員との掛け合いで行われる。「1回1回がライブだと思って、毎回新たなテーマに挑んでいる」との言葉通り、上映内容考案にも数日を費やし、お客を楽しませるアイデアのあれこれを練っていく。「来てくれた人には少しでも嫌な思いをしてほしくないので、例えば『隣に座った人の咳がうるさかった』なんて苦情が後から出ないよう、喉の調子が悪い人のために常時飴を用意している」などとサービスも万全だ。
また、音響へのこだわりにも並々ならないものがある。音楽家の聴覚をフルに働かせて選んだ音響設備によって、抜群の音で上映を楽しめるのはもちろん、流れ星の映像と共にウインドチャイムを鳴らすなどの演出にもセンスが光る。
上映のイントロ、アウトロとして流している楽曲は、今では世界的にも有名になったという友人の音楽家達が同館で演奏したものを録音して使用。ジュール・マスネ作曲の「タイスの瞑想曲」や、チャイコフスキー作曲の「メロディー」、ウジェーヌ・イザイ作曲の「こどもの夢」などの名曲をかなりの高音質で収めている。
更には、館内を彩る遊びゴコロ満載の様々なアイテムでも、来場者を魅了する。プラネタリウム装置の下にはおもちゃの電動列車が走り、地球儀、宇宙服を纏ったキティちゃんなどが館内の壁側を囲む。
これだけバラエティ豊かなアイテムを並べながらも、1人ひとりがとことんくつろいで上映を楽しめるよう、席の幅を広めに取ることで互いのひじがぶつからないよう配慮しているのみならず、リクライニング機能付きのクッション性の高いイスを設置している。加えて、足元からの冷えに悩まされる客が出ないよう、床暖房も完備。季節を問わず、快適な気分で上映に没頭出来るのが嬉しい。
上映は完全予約制。予約受付は「プラネターリウム銀河座」ウェブサイトから。