2013年6月、フランスの企業グループPPRがケリング(Kering)と社名変更したという情報は、ファッション関連のメディアに大きく報じられた。
ケリング グループは、「グッチ」「ボッテガ・ヴェネタ」「サンローラン」「ステラ マッカートニー」などのラグジュアリー部門18ブランドと「プーマ」「ボルコム」などのスポーツ&ライフスタイル部門5ブランドからなるもので、このグループのビジネススタイルは、新しい時代の到来を感じさせた。その企業活動の中心には、近年メディアに頻繁に取り上げられる環境問題や、女性に対する暴力の撲滅のための活動に取り組み、持続可能=サステイナブルな企業を目指すというビジョンがある。
ケリングが取り組むサステイナブルビジネスについて、同社サステナビリティ部門を統括するマリ=クレール・ダヴォ氏に話を聞くチャンスに恵まれた。
1992年国連主導のもとブラジルのリオデジャネイロで「地球サミット」が開催されたのを機に、環境保全の声は高まり、21世紀に入ると企業も本格的に取り組まなければいけない課題となった。そうした動きを受け、ケリングも現在ダヴォ氏が統括するサステナビリティ部門を2003年に創設。革新やイマジネーションを刺激し、コストを低減する可能性も含む、ビジネス上の機会を創出するものとして「サステイナブル・ディベロップメント」を打ち出した。
具体的な活動内容として、温室効果ガスの低減、排水、廃棄物削減、クロコダイルやリザードといったプレシャススキン、レザー、ゴールド、パッケージを含む紙類、ケリングのビジネスに欠かせない原材料の使用時に起こる問題解決がある。2012年ケリングは、メディアとステークホルダー(消費者、従業員、株主、取引先、地域社会など利害関係を有するもの)に対して、これら環境保全に必要な課題に対する、具体的な目標の数値と実行計画を発表した。その結果は2016年に公表されることになっている。
実行計画をグループ全体で共有するためにグループ取締役会に「サステイナブル・ディベロップメント委員会」を設け、またダヴォ氏が属する経営委員会(エグゼクティブコミッティー)と各ブランドにも担当部署を設けた。
「天然資源の枯渇、天候変動、生物多様性の消失、人口増加に伴う諸問題、これらに立ち向かう唯一の方法が、サステイナブル・ディベロップメントを日常に取り入れることだと確信しています」とダヴォ氏は毅然とした態度で語る。
これまでの消費社会のありかたとは違う「より少ない資源で、より多くの価値を生み出す」という発想のパラダイムシフトが起きているのだ。
2/3に続く。