「TETRAHEDRON」132 5. ISSEY MIYAKE--1/2

2015.01.19
世界的に活躍する4人の女性アーティストが、132 5. ISSEY MIYAKEをまとい、一夜限りの実験的なパフォーマンスを繰り広げた。

白寿ホール10周年記念企画、「アート×アート×アート」の第2弾、「テトラへドロン(TETRAHEDRON)」が、昨年12月に上演された。テトラへドロンとは、三角形から構成される四面体、あるいは、四面から構成される三角錐をいう。

イッセイ

三角形は、音楽、ダンス、写真の3分野のコラボレーション。四面体は、4人のアーティスト:音楽・マリンバ演奏の加藤訓子、ライブ写真撮影の高木由利子、そして、振付・ダンスの、黒田育世(Part1)、中村恩恵(Part2)を表している。

この4人のアーティストが着用したのが、三宅一生とReality Lab.チームが取り組む「132 5. ISSEY MIYAKE」。コンピューターサイエンスと協同し、3次元造形から2次元に折りたたむことを可能にした革新的な服づくりで世界を驚かせ、その後もさらに進化し続けている。ちょうどこの時期に展開されていたテーマが、「TRIANGLE」。最も単純な図形、「三角形」をインスピレーションの源としている。偶然にもテトラヘドロンのイメージと重なり、衣装協力が実現した。

イッセイ

音楽は、加藤訓子が、継続して演奏している、対照的な作風のふたりの作曲家、スティーブ・ライヒとアルヴォ・ペルトから選んでいる。「ふたりは現在80才代。それぞれ違う国で、若い頃から勢力的に活動し、音色やリズムを探し求めて、何もないところから自分の音楽のスタイルを作った」と、加藤は尊敬するふたりを評する。公演は二つのパートに分かれ、前半は、ライヒの音楽で黒田育世、後半はペルトで、中村恩恵が舞う。両パートとも、演奏は加藤訓子(上の写真・左)。

ステージの背景には、テトラへドロンから発生したグラフィックな映像が写し出される。苔のような映像から四面体に変容していき、音に反応して大きくなったり小さくなったり、まるで呼吸しているかのように動く。この“動く壁紙”という考えの映像は、高木由利子(上の写真・右)による発案。「ミクロの世界から宇宙に行く」イメージを表現している。加藤の紡ぎ出すマリンバの音と共鳴する踊り手の動き。しばらくして、シャッター音が響く。舞台の上から、また客席の最前列から、高木のとらえた体や表情が、わずかなタイムラグがあるものの、ほとんど瞬時に映写される。撮ったらそのまま映写されるというシステムになっているため、写真は選べない。ミステイクもそのまま観客の目にさらされることになる。投影されるのは、1秒半。写真家にとっても、かなりリスキーだ。「写真は選びたいけど無理。でも、選ばない方がおもしろいと思う」と高木。写真は、すべてがモノクロだ。

シャッター音も、あえて普通にしている。「音の邪魔にならないように、音に乗るというか、協調する、あるいは、音に入るとか。これ、チャレンジです」。加藤は、「写真のシャッター音一つも、音空間に引き込まれるものになるので、音楽のなかに溶け込んでいくことが理想的。空気を一緒に吸って、時間を流れていくことを共有できれば、今までにない空間が生まれる」と、期待をよせる。この空間で撮られた写真は、いままでの写真の概念とは明らかに違う。むろん、1枚の写真としても強く、上質。だが、舞台と客席が一体化した空間で、写真家もある意味“共犯者”としてかかわっているのだ。

2/2に続く。
清水早苗
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