ピエール・エルメ・パリがニコラ・ビュフと「愛のものがたり」をテーマにした特別なアートコラボレーションを、2016年1年間にわたり全世界の店舗でスタートさせる。
既に、ピエール・エルメ・パリ青山店2階の壁面には、今回のストーリーのスケッチやテーマとなる公園、主人公が描かれている。バレンタインデー、ひな祭りなどの季節に応じて、さまざまなパッケージや特別なマカロンやショコラが販売され、店舗環境も同物語で展開される予定。
コムデギャルソン・シャツやエルメスとのコラボレーションで、ファッションシーンにおいても知られるフランス人アーティストのニコラ・ビュフは、現在東京を拠点に活動。日本やアメリカのアニメやサブカルチャーを、ヨーロッパの中世、ルネサンスやバロックの古典様式と融合された作品で知られる。
これまでに東京現代美術館、原美術館やフランスの国際現代アートフェア、フランスの美術館などで作品を発表。パリ・シャトレ座公演オペラ「オルランド パラディーノ」のヴィジュアルデザインなどその活動は幅広い。
今回の物語は「太陽の王国」のエリオスと「月の王国」のロクサーヌを主人公に、詩的な愛と冒険の世界が描かれ、ストーリーは1年間を通じて順次発表されていく。
登場するキャラクターはロクサーヌの着飾ることが大好きな末妹や、彼女が飼っている猫、愛し合う二人の鍵を開けられる能力を持つエリオの友人のロボットの「キュピドン」など、アニメ的な各キャラクターが次々に予定されている。中には70年代の永井豪原作のロボットアニメ「UFOロボ・グレンダイザー」からヒントを得たというロボットも登場する。
それぞれの登場キャラクターは特別パッケージに描かれ、5個入りから40個入り(日本橋三越限定)まで、デザインを違えて全世界のメゾンで展開される。
「このプロジェクトの最初打ち合わせで、パリのピエール・エルメのメゾンを訪れたときに時差ボケもあって、メゾンの近くにあるモンソー公園をピエールと散歩しながら話をしたんだ。その時に彼とグレンダイザーの話をしたかもしれない(笑)。後でモンソー公園の歴史を調べると18世紀の貴族のテーマパークだったことが分かった。不思議な建物やアーチが残っていて、それは本物だったりフェイクだったりいろいろ。ちょうどその時にオペラの魔笛の仕事をしていたこともあって、公園のストーリーがどんどん広がりました」とニコラは話す。そのモンソー公園を描いた絵はパッケージにもなり、青山店の壁面にも描かれている。
主人公の名前がロクサーヌと聞くとポリスの曲を想起するが「もちろん、ポリスの曲もそうだが、月に関係する言葉で強い女性の名前を考えていた。ちょうどパリで手掛けていたオペラがアレキサンダー国王の話で、王女がアゼルバイジャン出身のすごく強い女性の話。その名前がロクサーヌだったことも奇妙なつながりだった」とニコラは作品の不思議な縁を説明してくれた。
詰め合わせのショコラも今回の物語のキャラクターの性格に合わせ、エリオスにはブラジルショコラのガナッシュ、ロクサーヌにはバニラ風味のショコラノワールと、パッケージだけではなくレシピにもその性格が反映されており、ストーリーから世界を紡ぐ二人の1年間のコラボが楽しみだ。
Text:野田達哉