今、モード界では本格的なジェンダーレス化が進行中だ。身近なところで言えば、レースアップシューズやチャッカブーツなど、これまで一般的に「男性用」とされていたシューズを女性が履くことに抵抗がなくなってきているのもその一端だろう。
さらに、チェスターコートやパンツスーツなども女性の市民権を得て久しい。マニッシュなファッションを着こなす女性のイメージと言えば、クール、インテリジェント、インディペンデント…などが挙げられるが、果たして男性から見た印象とは一体どんなものなのか? ファッション誌やTVなどを中心に国内外で活躍するスタイリストの東海林広太さんに撮影現場で話を聞いた。
「たしかにファッション界では、価値観の多様化や男女間でのワードローブシェアが注目され始めた影響で、性差を超えたアプローチが増えていますね。僕自身も性別を意識しないスタイリングが得意なので、このトレンドの流れはとても興味深いですね」と話す東海林さん。15-16AWコレクションでも、ジェンダーを超えたルックを多く提案したGUCCI(グッチ)やStella McCartney(ステラ マッカートニー)、Jil Sander(ジル・サンダー)などが印象的だったという。
ジェンダーレスなファッションを楽しんでいる女性については、「確立された個性を持っている人」という印象を受けるという東海林さん。「これは男性にも言えることですが、日本人はとにかく皆ファッションが大好きで、自由な発想で様々なジャンルのスタイルに挑戦しているので、自分に似合うものを良く知っていますよね。特に日本人女性は、サイズや丈感などのバランス感覚に優れているので、トレンドをうまくミックスしたスタイリングが上手ですね。感度の高い女性はすでにジェンダーレスなアイテムを取り入れていると思いますが、初心者の方であれば、やはりシューズから始めるのが良いと思います」とのこと。
そこで今回は、メンズライクなシューズを多くリリースするREGAL(リーガル)に協力してもらい、新作を例に挙げ、ジェンダーレスなコーディネートを得意とする東海林さんにスタイリングの提案をしてもらった。
「リーガルのシューズはベーシックで使い勝手の良いアイテムが多いですね。例えば、『F30F』(3万2,000円 ※9月下旬発売予定)のサイドゴアブーツはトレンドのボリューミーなスカートやワイドパンツと好相性。落ち着いたカラーなので、何にでも合わせやすい万能選手といった感じです。シューレースがないカジュアルな印象の『F29F』(2万8,000円)は、クリーンな白シャツや七分丈パンツなどと合わせると、程よいヌケ感が出せると思います。ソックスとも相性が良さそうですね。レースアップシューズ『F28F』(4万円)はワンピースにさらりと合わせたり、パンツスタイルでブーツインにするのもオススメ。クロコ型押しの『F07F』(2万8,000円)は難易度が高いですが、ゆったりとしたシルエットのシャツやジャケットと合わせて胸元を少し肌見せすることで、女性らしいニュアンスが出せると思います」。
トレンドも一周し、ほぼ出尽くしたと言われる今――新鮮なスタイルを着こなす最後の手段はジェンダーのラインを超えることなのかもしれない。この秋は、ジェンダーレスなシューズを合わせて、“男前コーディネート”を楽しんでみては。
【Profile:東海林広太】
2007年に独立。『NYLON JAPAN」や『Numero Tokyo』などを始め、国内外のファッション雑誌やTV、アーティストのスタイリングなどジャンルレスに活躍中。パーソナルワークとしてアジア人をモデルにしたポートレート『material portrait』やアジアに特化したファッションストーリー『TOKYO IT MODEL』もリリース。