日頃からお世話になっている人を会食にお招きする機会があれば、ぜひオーダーして欲しいのがシャンパーニュ。泡立ちのよいシャンパーニュで乾杯すれば、ゲストの緊張もほぐれ、和やかなムードで会食を楽しめるでしょう。というわけでこの3/3では、レストランにおいてゲストをおもてなしする際、相手を満足させるテクニックをお伝えします。
―――ワインエキスパート、フードアナリスト 瀬川あずさ
<Lesson 3>
レストランでその席にふさわしい1本を選ぶには
■ソムリエと事前に相談しましょう
レストランでのシャンパーニュの選び方は、ゲストの好みや予算を伝えて、ソムリエと相談するのが一番です。ポイントは、事前に電話で相談しておくこと。どんなタイプのものを楽しみたいか、予算はどこまでOKかなどをきちんと伝えれば、おすすめをいくつか提案してくれます。
事前に電話で相談することが難しい場合は、ゲストに気を遣わせるのはご法度なので、選んだものの値段が分からないよう、ワインリストから気になるものを指差ししてソムリエに伝えましょう。
■「ランク」と「ブドウ」の味の特徴を頭に入れて
ソムリエと相談するときに知っておくと便利なことは、シャンパーニュのランクと味の特徴です。
(1)ランク
まず大きく分けて、「ノン・ビンテージ(NV)」と「ビンテージ」があります。
一般的なシャンパーニュは「ノン・ビンテージ(NV)」といい、複数の収穫年の異なるブドウをブレンドして製造されています。ブレンドに関しては各メゾンの特徴が表れるところ。熟成期間は最低でも15ヶ月です。「ビンテージ」と呼ばれるシャンパーニュは、優れた作柄の年に、ブレンドなしで造られたもの。熟成期間は3から5年で、よく知られている「ドン ペリニヨン」に関しては7年程度と言われています。
更に、各メゾンのプライドがかかった最高級シャンパーニュは「プレスティージュ」と呼びます。状態のよいビンテージのグランクリュ(シャンパーニュ地方で100%の格付けを与えられた村)を基本に、最高級の原種ワインのみが使用されています。
(2)ブドウ
もうひとつのポイントは、ボリューム感がある黒ブドウだけで作られたものか、爽やかな白ブドウ主体のものかということ。材料となるブドウの種類が味を決める重要な要素です。
シャンパーニュ地方では、黒ブドウの「ピノ・ノワール」「ピノ・ムニエ」と白ブドウ「シャルドネ」の3品種が栽培されているのですが、黒ブドウのみのものを「ブラン・ド・ノワール(Blanc de Noir)、白ブドウだけ使うものを「ブラン・ド・ブラン(Blanc de Clanc)」と呼び、また黒ブドウと白ブドウとの混合のものもあります。
ソムリエには、重めが好きなのかさっぱりめが好きなのかゲストのお好みを伝えるだけでも十分ですが、ブドウの種類やランクを理解しておくと、お店が選んだシャンパーニュがどういう特徴かをつかむことができ、食事の席の話題づくりにもなりますよ。
■ホスト・テイスティングは堂々と
緊張する方もいらっしゃると思いますが、ホスト・テイスティングを断るのは、あまりおすすめしません。ホストとしてのマナーであり、シャンパーニュをみんなで楽しむための大切な儀式でもあるので、堂々と行うようにしましょう。
まずはソムリエがボトルを見せてくれるので、生産者の表示などが、頼んだものと異なっていないか確認しましょう。グラスに注いでもらったら、口にする前に香りを確かめます。シャンパーニュの場合、泡が香りを運んでくれるので、グラスをしっかり回す必要はありません。その後、味が劣化していないかどうかを確かめ、ボトルの見た目、香り、味わいともに問題なければ、ソムリエに「美味しいです」と一言お礼を言って、全員に注いでもらいましょう。
■注がれたシャンパーニュ。その泡と香りを堪能して
ソムリエがグラスにシャンパーニュを注いでくれている間、グラスに目を留めるのがマナーです。注ぎ終わった後は、すぐに口を運ばず、酵母の香りを堪能することも大切です。
■最初の一杯で相手の心をつかむ
いずれにしろ、スターターにシャンパーニュを楽しむ場合は、「最初の1杯で相手の心をつかむ」ことを意識して選ぶのがポイント。シャンパーニュへのこだわりが強いゲストがいらっしゃるなら、特に最初の一杯が肝心です。相手に喜んでもらうことを一番に考えながら、感謝の気持ちを十分に伝えることができるよう、おもてなしの心が大事です。
【瀬川あずさプロフィール】
聖心女子大学卒業後、施工会社の秘書を務め、多くの飲食店のリーシングや施工業務に携わる。その後、趣味が高じてワインエキスパート、日本酒利酒師の資格を取得。記者・ライター業、飲食コンサルティング業、ワイン講師など食やワインにまつわる仕事に携わる。2014年、食に特化したリレーションサービスを提供する 株式会社食レコの代表取締役に就任。ワインスクール「レコール・デュ・ヴァン」新宿校の主幹講師も務め、食やワインを通じた豊かなライフスタイルを発信している。
撮影協力・ジョンティ アッシュ(東京都港区白金台5-18-17-2階)