6月17日から20日の間、フォレンツェで開催されたピッティ・イマージネ・ウオモ86の総来場数は約3万人、内バイヤーは1万9,000人と前年より5%増加し、参加ブランドも1,165ブランドと近年の春夏シーズンの展示会としては最高記録となった。海外バイヤーの来場者ランキングでは1位ドイツ(800人)と2位日本(799人)とほぼ同数。以下スペイン、イギリス、中国で、イタリア人バイヤーは前回より8%増の1万1,300人となった。
今回はピッティの母体となるCFMI(チェントロ・ディ・フィレンツェ・ホームタウン・オブ・ファッション)の創立60周年を記念した「フェレンツェ・ホームタウン・オブ・ファッション」が同時開催され、フォレンツェ出身のメゾンを中心に様々なイベントがピッティ・ウオモのメイン会場であるフォルテッツァ・ダ・バッソだけではなく、フォレンツェ市内のいたる場所で開催。オープニングセレモニーには、前フィレンツェ市長のマッテォ・レンツィ(Matteo Renzi)首相が開幕を宣言。ピッティ史上初めてイタリア政界のトップがイベントに参加したことで、メンズ業界とフィレンツェ市が一体となったエネルギーに包まれ、新鮮さを失いつつあるミラノメンズから覇権を奪う勢いだ。
オープニングセレモニーでは、英国のファッション情報サイト「BoF(ザ・ビジネス・オブ・ファッション)」が選ぶTOP30に、日本から三越伊勢丹、ユナイテッドアローズ、ビームスが選ばれ、授賞式が行われた。同アワードはメンズ市場でこの数年間“マルチブランド(セレクトショップ)”という概念で、世界中の洗練された顧客のための店舗を展開している企業を表彰したもの。
この開会式に先立ち16日に前夜祭として、オペラ座でアンドレア・ボチェッリ、パトリツィア・オルチアーニとフィレンツェ5月音楽祭フィルハーモニーによるコンサートを開催、ステファノ・リッチのプロデュースによりベッキオ橋のライトアップ、フランスのイロトピ(Ilotopie)のウォーターショーが行われた。
17日にはヴォーグイタリアがヴェッキオ宮殿でフィレンツェ出身のメゾンに捧げた写真展を開催。グッチ(Gucci)は「グッチミュゼオ」を一般開放し、夜にはカクテルパーティーとプロジェクションマッピングを開催。エミリオ・プッチ(Emilio Pucci)はアーカイブのスカーフモチーフでサンジョバンニ洗礼堂を覆うインスタレーションで観光客だけではなく、フィレンツェっ子を驚かせた。これに合わせ、同日プッチ宮殿でカクテルパーティーを開催。コレクションやプリントのアーカイブも披露された。
これら以外にもサルヴァトーレ フェラガモ(Salvatore Ferragamo)が同店博物館で“歩く”という行為をテーマとした「エクリプリウム(Equilibrium―平衡)」展を開催し、店舗前ではダンスのパフォーマンスも行われ、同日夜にはエルマンノ・シェルビーノ(ERMANNO SCERVINO)が初のカプセルコレクションの発表ををベルヴェデーレ要塞で大規模なパーティー形式で行った。
また、ピッティとオンラインブティックの「ザ・コーナー・ドット・コム」は、フォレンツェ出身で米『W』マガジンの編集長ステファノ・トンキ(Stefano Tonchi)をキュレーターに迎え、「De’(MILLENNIALS) COSTUMI―ミレニアム世代のコスチューム」のインスタレーションを実施。16世紀にデラ・カーサ司教によって執筆されたという『ガラテーオ―よいたしなみの本』をベースに“ミレニアルズ”と呼ばれるY世代に向けて、現代のエレガンスを独自の視点でプレゼンテーション。ここで披露されたセレクションは同サイトにおいてリアルタイムで販売された。
さらに今秋公開予定の映画『イタリアファッションの貢献者たち( Italie della Moda,Mani e mmenti eccellenti )』(監督:アンジェロ・フラッカベント)、ナポリの服飾文化を、ナポリを代表するサルトリアーレが登場して語る映画『エ・ポイ・チェ・ナポリ(E poi c’e Napoli)』(監督:ジャンルカ・ミリアロッティ)の先行公開、カクテルパーティーなど、イタリアファッションを紐解く映画、イベントが相次いだ。
その中、黄金期のイタリアのカーデザインのコレクションで世界的に知られた「ロプレスト・コレクション(Lopresto Collection)」の「50年代、60年代イタリアン自動車デザイン」がオープン展示され、イタリア車好きを喜ばせた。