「ソックスに色を」。それまで、機能や耐久性だけがフォーカスされていた靴下を、ファッションアイテムの一つとして昇華させたスウェーデン発「ハッピーソックス(Happy Socks)」。ブランドスタートから、5年でその認知度は飛躍的にアップし、現在卸も含めれば17ヶ国で販売されている。創業者の1人であるミカエル・ソーデリン(Mikael Soderlindh)に、そのハッピーなブランドストーリーを聞いた。
――まず、ブランドのヒストリーからうかがえますか?
ブランドとしては若く、設立してからまだ5年です。立ち上げたきっかけは、カラフルでデザインされたソックスがなかったから。あったとしても、ノベルティーだったり、キャラクターものだったり、品質が良くなかったり、すごく高かったり。だからリーズナブルな値段で質が良く、自分がよく行く店で買えるカラフルなソックスを作りたかったんです。そうしたら、皆、ハッピーな気持ちになれるでしょう?
――ハッピーソックスは、設立してすぐにブレイクしました。その成長の秘密は?
これまでデザインのみならず、ライフスタイルにもフォーカスしたハッピーソックスのような文化がなかったんでしょうね。ソックスだけにフォーカスしたブランドというのは少ないでしょう。他のブランドにとって、ソックスはそれほど重要ではなかったから。
―― サイトには、明確なストラテジーのもとにマーケティング戦略をしたというような旨がありましが、具体的にはどのようなことでしょう?
今、世界はとても狭くなっています。私達のブランドは、ブロガーやFacebookを通じてあっという間に世界中に広まったんです。
今でこそ重要な地位を築いていますが、私達がブランドを始めた2008年はブロガーブームの初期でした。5年前、私達はブロガーにソックスのカタログを送ったんです。当時、プレスリリースはジャーナリストなどに送られるもので、ブロガーが手にするなんてことはありませんでしたよね?だから5年前の彼らは、自分がプレスみたいに扱われることが嬉しかったようです。
まずは雑誌と同時に世界中のブロガーに「初めまして。ハッピーソックスというブランドを立ち上げました。商品を試してみませんか?」という文章にプレスリリースを添付してメールを送りました。そしてブログに紹介された。雑誌はブログからネタを探しているので、そのうち雑誌で商品が取り上げられるようになりました。それから私達は、各国へ赴いてセレクトショップなどと交渉をスタートしたのです。そうしてインターネットのユーザーからどんどん拡散して、人気が出たというわけです(笑)。
――確かに今でこそ、理解できる手法ですが、当時としては非常に斬新です。それが大きな戦略の一つだったということですね。
そうです。スウェーデンはとても小さな国です。とっても(笑)。スウェーデン国内だけのビジネスでは不十分ですから、常にグローバルな戦略を立てています。
――今、世界中で直営店はいくつありますか?
直営店ではなくハッピーソックスストアですが(笑)、日本、香港、台北、韓国にそれぞれ3店舗、それからスウェーデン、ロンドン、ニューヨーク、ドバイと、15店舗から20店舗でしょうか。そのほか、17ヶ国に代理店があり、8,000種類の商品を卸しています。5年間、市場開拓のために世界中を飛び回っている生活です(笑)。
――ハッピーソックスは、私達にソックスの新しい概念をもたらしてくれたと思いますが、他の国で同じようなアイテムに出合ったことはありますか?
日本とイギリスには洗練されたソックスがあります。少々値が張っても品質や素材が良いソックスを履きたいと思うのは、日本人とイギリス人です。ブランドを始めた時、ポール・スミスがカラフルなソックスを出していましたが、それでもストライプとか、アーガイルのようなトラディショナルなものでした。日本ではウィメンズには、既に素材をミックスしたユニークなソックスがありましたが、メンズにはありませんでした。今は、どこにでもありますが(笑)。
――それはハッピーソックスのおかげですね。
そうかもしれませんね。おそらく、顧客がカラフルなソックスを楽しむようになったんだと思います。ソックスは忘れられた存在で、つまらないし、機能性以外のものを求められていませんでした。そこにデザインやクリエーティビティーを取り入れたら、とても楽しいものになったというわけです。
――確かに、5年前の私のクローゼットには、黒やグレーのソックスばかりでした。それが最近はどんどんカラフルになって、それとコーディネートするために洋服の方がシンプルな色になってきました。その意味では、新しいスタイリングの提案とも言えますね。
(デザインを担当する)ヴィクター・テル(Viktor Tell)はよく「ファッションはソックスから始まる」と言っています。朝起きたらまずソックスを履いて、それから何を着るか決めるのだと。だから、ハッピーソックスはソックスのみにフォーカスしているんです。他の何かのエッセンスとしてのソックスではなく。
(2/2に続く)