文化服装学院で1月17日開催された"クリエーターズトーク"に、「ビューティフル ピープル(beautiful people)」デザインチームの熊切秀典(デザイナー)、戸田昌良(パタンナー)、若林祐介(セールスプロモーション)、米タミオ(企画生産)が登場した。
同学院の卒業生である4人は、ブランド設立からの7年間のクリエーションについて語り合った。
まず、熊切が取り出したのは、ブランドデビューを飾ったパンツ。一見デニムだが、あたりやポケットもすべて刺繍で表現されている。「デニムに見えるのに値段が29万円。素通りする人も多かったが、これを見て何かを感じてくれた人がいて、そんな人たちがその後もずっと僕らを助けてくれた」と振り返る。
ブランドの代名詞ともいえる、大人と子供が共有する服「キッズシリーズ」が誕生したのは2007年秋冬シーズンから。ロンドン・サビルローで修業した経験を持つ米が関わっているだけあって、小さいサイズながら仕立ては本格的。大人と子供が同じ服を着るのは本当は難しいため慎重にパターンを調整し、ハンガーにかけたときに子供服にみえるようなバランスを追求している。
コレクション性、テーマ性を意識し始めたのは2009年春夏シーズンから。その後、ノルウェイの森が映画化された際には、直子がよく来ていた上品なキャメルのコートをイメージしたコートをデザインしたり、3Dで浮かび上がるプリントを使ったり、2011年春夏には、Twitterのようなつぶやきが書かれた風船をプレゼンテーションでモデルに持たせたりと、ファッション以外の世間の流れからインスピレーションを受けながら服作りを続けてたという。
2011年秋冬シーズンには、往年の日本ブランド「VAN」とコラボを実現。そのきっかけも村上春樹で、村上が最初に受賞したときVANのジャケットで式に出たという話を聞いて興味持ったのだそう。日本へ目が向き始めたのもその頃。2013年春夏は「男はつらいよ」をテーマに、日本という要素を面白く取り入れることに挑戦した。
ビューティフル ピープルは、2011年よりプレコレクションもスタートしている。「ヨーロッパは年4回の展示会が当たり前。半年先のトレンドが読めない時代だから商品サイクルを早めてほしいというバイヤーからの要望がきっかけだった」と語る。未来を見据えながら着実にブランドを成長させてきた4人の姿勢が伺える。
そして、熊切と米がかつて在籍していた「コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)」について聞かれると、「川久保玲さんのものづくりは徹底していて、本当にすごかった。そういう人の元で学ぶことができたから、今も良いものづくりができていると思う。しかし、同じことをやるつもりはない。あのアバンギャルドはギャルソンの特許だと思うし、それをやるにはギャルソンに残ればいい。あのころ学んだ洋服づくりの精神だとか、徹底的なこだわり、洋服に全精力をかける姿勢を財産にして、でも同じことは絶対にやらない」と話した。
このトークショーには、4人と同じく同学院の卒業生である伊勢丹新宿店PRの大田全里もゲストとして登場。2008年のサロン・ド・ショコラが東京のデザイナーとコラボレーションしたのがきっかけでビューティフル ピープルとの出会い、その頃からのファンだという。
ビューティフル ピープルは3月6日(水)には伊勢丹新宿店にショップをオープン。60年から70年代のファッションをテーマに、代官山 蔦屋書店と伊勢丹のコラボで品揃えするコンセプトショップ「DECADE」のコーナーでは、「ピエール カルダン(pierre cardin)」とのコラボバッグも発売する。