メゾンエルメス、人に最も近い家具「クローゼットとマットレス」展開催中

2013.09.06

東京銀座のメゾンエルメスフォーラムにて、11月30日までスミルハン・ラディック+マルセラ・コレア展「クローゼットとマットレス」が開催されている。建築家のラディックと彫刻家のコレアはチリ・サンティアゴをベースに活動している。

展示は二つのインスタレーション作品と写真、ドローイングで構成された。インスタレーションの一つは、薄さ1mm程の薄い杉の板で組み立てられ、歪んだ姿見が取り付けられた巨大なクローゼット。内部は、薄い杉壁を通して外光が入り外部からは想像できない真っ赤な空間。中にはイスが1脚用意され、そこに腰掛けながら、iPadでラディックの過去の作品と併せて彼の建築哲学が語られる映像作品を鑑賞できる。天井からはガラスの容がぶら下がり、壁には黒いシンクが設えられている。クローゼットの上には、白いロープを通すことでの塊のように造形された赤いマットレスが載る。二つ目のインスタレーションでは、この赤いマットレスの塊が天井より数個ぶら下がり、迫力ある空間を見せる。

また、会場の壁の一面には、街中の脆弱な建築を撮った写真シリーズ、「はかない建築 (Fragile Construction)」が展示されている。これらはフォーマルな“建築物”としてではなく、インフォーマルに建てられた小屋や墓石など、様々な“建造物”の断片が写り込んだ写真だ。無計画に造りあげられ、価値のないものと見られがちなこれらの建造物を撮ることで、通常の建築物を眺める時には窺い知ることのできない、個人のミクロの歴史や記憶が表現された。

オープニングには、プライベートでもパートナーのラディックとコレアが来日した。両氏は「クローゼットもマットレスも建築の一部と形容するには軽すぎる家具。他方でインテリアと呼ぶにも大きすぎるアイテムだ。家の中で独特の存在感を放っている。クローゼットには人の服、日記、写真などが収納され、マットレスは寝る人の重み・汗を吸い取り、人間に最も近い家具と言える。外界から距離をとり、自身と語りあえる場所の象徴として、クローゼットとマットレスを展示した」と話した。

外界と断絶し、自分と向き合うために隠れることのできる、「シェルター」は過去の彼らの制作でもたびたび出てくるテーマ。2010年のヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展では、建築家の妹島和世キュレーションのもとで、シェルターのような作品「魚に隠れた少年(The Boy Hidden in a Fish)」を出展している。

フォーマルで表層的になってしまいがちな日常から離れ、自身と深く向き合うことや、個人的な記憶や歴史の重要性を感じることができる今回の展示。建築家と彫刻家という役割を全うしながら、恊働したインスタレーションには、コラボレーションのあり方についても考えさせられる。


イベント情報】
スミルハン・ラディック+マルセラ・コレア展「クローゼットとマットレス」
会場:銀座メゾンエルメスフォーラム
住所:東京都中央区銀座5-4-1
会期:11月30日まで
時間:11:00から20:00(日曜日は19:00まで)
入場無料
Maya Junqueira Shiboh
  • メゾンエルメスにてスミルハン・ラディック+マルセラ・コレア展「クローゼットとマットレス」開催
  • クローゼットのインスタレーション
  • 内部への入り口
  • に内部は外光により赤い空間。天井からガラス容器が下がり、壁にはシンクが設えられている
  • クローゼット内部
  • 白いロープで造形されたマットレスが天井から下がる
  • 白いロープで造形されたマットレスが天井から下がる
  • 壁には写真シリーズ「はかない建築 (Fragile Construction)」が展示される
  • 左からスミルハン・ラディック、マルセラ・コレア
ページトップへ