16年9月17日から11月20日の65日間、茨城県北地域の海と山を舞台に、新たな芸術祭「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」が開催されることが決定した。
開催地となるのは、日立市、常陸太田市、高萩市、北茨城市、常陸大宮市、大子町の全6市町。総合ディレクターには、森美術館館長の南條史生が就任し、キュレーターは、「札幌国際芸術祭」でアソシエイト・キュレーターを務めた四方幸子、アソシエイトキュレーターはインディペンデント・キュレーターの金澤韻、クリエイティブディレクターは谷川じゅんじが務める。
茨城県の北部は、海と山が織り成す豊かな自然に恵まれる一方で、江戸時代の末期に開かれた炭鉱、その後に発展した日立銅鉱山を始めとする工業・産業で日本経済の成長を支えてきた深い歴史も持つ。
また、かつて五浦海岸は、文人・岡倉天心や、美術家・横山大観らが活動の拠点としていた地であり、91年にはアーティスト・クリストによる傘を1,340本並べた「アンブレラ・プロジェクト」が常陸太田を中心に行われ、世界の注目を集めた近代美術の発展地でもある。さらに、県内には様々な研究機関が所在し、85年には科学万博も開催されるなど、科学技術の礎を築いた地とも言える。
そんな多様性を持つ茨城県北で行われる「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」は、“自然と対話するアート”、“科学技術を利用した先進的なアート”にフォーカスし、アートと科学技術の実験を通して、豊か自然に新たな創造の息吹を吹き込む革新的な芸術祭となる。
開催地となる全6市町は、山間部のグリーン、海浜部のブルーの本芸術祭のキーカラーにより大きく2つに分けられる。総合ディレクターの南條氏によると、そこには、「『今日は山側に行って、明日は海側に行ってみよう』などという楽しみ方をしてもらいたい」という思いが込められているようだ。
参加アーティストは、チームラボ、ザドック・ベン=ディヴィッド、ソンミン・アン、オロン・カッツ、ティファニー・チュン、テア・マキパー、ハンス・ペーター・クーン、森山茜、落合陽一、米谷健+ジュリアを始め、プロジェクトを含む約80作品が出展。その内半数が海外のアーティストを予定している。南條氏は「過去2年間、芸術祭に参加したことがないアーティストに出展してもらいたい」と話している。
チームラボは、茨城県天心記念五浦美術館を会場に、“日本画”をテーマにした新たな作品を発表する。“現代の魔法使い”と呼ばれる落合陽一は、物理、計算機科学、アートを融合させた作品を、フィンランドのアーティスト、テア・マキパーは社会環境のリサーチに基づく屋外プロジェクトを予定。また、芸術祭のテーマソングは、やくしまるえつこが担当し、バイオテクノロジーを駆使した楽曲が制作される予定となっている。
他にも、住民、来訪者、アーティストなど様々な人々を巻き込み新しい芸術表現を生み出すことを試みる参加型プログラム「アートハッカソン」や、筑波大学を始めとする県内諸大学や地域に根付く伝統工芸、産業との連携プロジェクト、外国人アーティストの滞在プログラム「アーカス」の協働など、地域に根差した創作活動を経て新しいアートの可能性を模索していく。
南條氏は「自然、科学技術、人間性の統合を可能にするのはアートである。茨城県北が持つ美しい自然や、歴史遺産を継承し続けることももちろん重要だが、新しいものを作ることで初めて伝統が生きる。この芸術祭は、海と山の自然、生活に彩られた町の中に“驚きと感動”を誘う最先端の芸術作品を招聘し、地域に根差した“今ここ”でなければ生まれてこない独自の芸術祭としていきたい」と意気込みを語った。
【イベント情報】
「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」
会場:茨城県地域6市町(日立市、常陸太田市、高萩市、北茨城市、常陸大宮市、大子町)
会期:2016年9月17日~11月20日