「手の延長としてではなく、脳の延長としてプログラミングを使っている。すべてをコンピューター上で制御しないで行うため、作品の完成形を事前に絵コンテで見せることができないので、説明するのに苦労する」と苦笑するのはメディアアーティストの平川紀道氏。
同氏は2月26日より開幕した「メディア アンビション トーキョー2016(MEDIA AMBITION TOKYO 2016)」に、LEXUSとのコラボレーションによる映像音響インスタレーション作品の『the view 【for LEXU】』で参加。六本木ヒルズの森タワー52階東京シティビューで、レクサスLF-LCの車体とともに壁面2面を使った映像がノンストップで流れている。今年1月に発表されたラグジュアリークーペLC500への注目もあって、初日から長時間にわたり、先鋭的なこの空間に身を置く観客の姿もあり、メディアアートが身近なものとなりつつあることを実感する。
今回の作品は、同氏が今回同様レクサスとのコラボにより2007年にミラノサローネで発表した作品をベースに、「ミラノで発表したが、日本では未公開だった作品だった」ため、以降8年間のテクノロジーの進化に合わせ、新たにプログラミングを書き換え公開した作品。当時は周囲の動きに対応するインタラクティブな提案だったが、今回はインタラクティブの要素を排除し、データを用いず、純粋にコンピューターの計算だけで映像が表現される。地平線をモチーフに、ビルや山、川といったモチーフを連想させるグラフィックスがエンドレスで描写される。
「コンピュータープログラミングはアート足り得るか?」という意地の悪い質問には「僕自身はテクノロジーとサイエンスの領域よりも、アートとサイエンスの関係性に興味がある」と平川氏の答えは明快だ。
8年前に比べると文字通り桁違いにンピューターの性能は進化した。その処理能力のスピードアップが映像という形で表現され、テクノロジーの進化がアートとして集中展示されるというMATのイベントコンセプトを代表している。
テクノロジーの進化が、未来の車社会にどういった影響を与えるかという命題に、空間表現でイメージ化しているのは、インターセクト バイ レクサス東京で行われている「White Rain for LEXUS」も同様。照明を使った光のインスタレーション作品で知られる松尾高弘氏とのコラボでは、今回は新しく開発されたホログラフィックディスプレイに観客が触れることで、レクサスGSFの車体の周りを取り囲んだLEDライト24本とアクリル50本のポールが人工的な雨のシーンを描き出す。その光が車のボディに反射し、ホログラムとの連動で人との関わりで変化を生み出すという趣向。ブルガリとのコラボやさまざまな商空間のインタラクティブアートを手掛ける同氏らしい作品だ。
「光の流れは計算上、同じシーンを再現することはなく、一期一会。自分自身はテクノロジーだけではく、そこに人が介在することが重要。その点では車というメディアは面白い」と松尾氏は、今回のレクサスとのコラボについて話す。“エルフィネス”というデザイン概念を掲げるレクサスにとって、次世代のラグジュアリーさを先鋭的なデザインで実験する場としてMATの場は好相性なようだ。
【イベント情報】
MEDIA AMBITION TOKYO 2016
■六本木会場
六本木ヒルズ52階東京シティビュー
住所:東京都港区六本木6-10-1
<展示>
会期:2月7日から3月21日
時間:月から木曜日・日曜日、祝日10:00から22:00
入場料:当日1,800円 前売り1,500円(東京シティビュー入場料)
■青山会場
インターセクト バイ レクサス
住所:東京都港区南青山4-21-26
会期:2月8日から3月21日
時間:11:00から22:00
入場無料
Text: 野田達哉