11月29日から3日間に渡り開催されたファッションとアートの短編映像祭「アスヴォフ・トウキョウ(ASVOFF TOKYO )」では、「アンリアレイジ(ANREALAGE)」デザイナーの森永邦彦氏と「ライゾマティクス(rhizomatiks)」の真鍋大度氏によるトークショーが30日に行われた。それぞれのジャンルの垣根を越えて活躍する若きクリエーター2人は、近年の活動について紹介し合いながら、トークを展開した。
13-14AWコレクションで、太陽光(紫外線)によって色が変わる服を、14SSにはダイヤルを巻いて形を変化させられる服を発表した森永氏は、「洋服で常識とされていることをいかに壊していけるかが(自身の服作りの)根本にある。とはいえ、ただの面白発明では意味がないので、エレガントでありスタイリッシュであるというファッションの領域はしっかりと守りたい」と語る。
この色が変わる服は、紫外線による化学変化「フォトクロミック」という現象を利用した特殊な染料を生地に施すことで誕生した。真鍋氏もこのフォトクロミックに論文を通して出会い、紫外線を当てると色が変化する液体を使った実験や、フォトクロミック物質を挟んだフィルムを内部に仕込んだ透明な板の上にプログラミングで絵を描く仕組みを作る実験などの記録を映像と共に紹介。
「真鍋さんが洋服を作ったら面白いと思う」という森永氏のコメントに対し、「与えられたテーマについてアイディアを考え出すのは好きだが、それを最後に服に落とし込むまでは難しい」と真鍋氏。そして、「センサーを使って、人の気分や状態によって形が変わったり、心拍に連動して衣装のスリットが開いたり、笑うと服の形が変わったりする服の様に、何か入力に応じて変化する様なものは5、6年くらい前に幾つかプロトタイプを作った。技術的には全然不可能では無いが服にする部分のノウハウが全くなかった」と続けた。
真鍋氏は実際に、医療器具で使われるセンサーなどを使った実験映像を流し、人工筋肉を布に縫い付け、手に力を入れたり、顔を動かしたりするのに連動して布の形状が変化する様子を見せた。また、カンヌ広告祭の授賞式でのプレゼンテーションが話題になった女性ユニット「パフューム(Pafume)」の映像と共に、衣装の柄や形が変わる仕組みを説明。耳が聞こえないダンサーが、電気刺激を頼りにダンスするプロジェクトの様子や、ミシンをプログラミングで操作し、プログラミング言語を使って自分で描いた絵をTシャツに刺繍するプロジェクトなどが紹介された。
2人はプライベートでも連絡を取り合う仲だといい、森永氏は閃いた発想が可能であるかを、真鍋氏に聞くこともあるという。アスヴォフ主催のダイアン・ペルネ氏もトークショーの最後にコメント。「アンリアレイジのお店で実際のインスタレーションを見せてもらいとても興味深かった。真鍋さんが紹介したセンサーで服が動く仕組みも面白い。彼らのクリエーションがどのように洋服に発展するのか楽しみにしている」と締めくくった。