2011年の5月号で大幅リニューアル以後、カルチャーを融合したファッション誌としての地位を確立し、感度の高い女性たちからの支持が熱いマガジンハウス刊行の女性誌『GINZA(ギンザ)』。ライフスタイル誌『BRUTUS(ブルータス)』の編集者、『relax(リラックス)』の副編集長を経て、リニューアルを機に『GINZA』の現編集長を務める中島敏子氏に訊いた、いまの『GINZA』ができるまで。
ーーリニューアルでマスコミだけではなく読者に衝撃を与えてから4年半。ファッション業界からもすぐ受け入れられたという印象はありましたか?
既存のものから激しくカルチャー色の強いものに変えたことで、ファッション業界からは驚かれました。一概に「いいですね!」と言われたというよりは、最初はどう評価していいのかわからなかったのではないでしょうか。今まではこういう雑誌がなかったし、ファッション誌という枠組みからは逸脱していたので。
ーー作為的に逸脱しようとされたんですよね?
逸脱しようとしましたし、私にはこれしかできないなと。そもそも女性誌を作ったことがなかったので、ファッション誌のルールも作り方の共通認識も知らなかったんです。カルチャー誌におけるファッションは、テーマの中にファッションを当て込む、というある意味ワンマンなやり方なんですけど、ファッション誌はまず商品があって、それをどう料理するのかを考える。それさえも知らなかったので、あんなものができたんだと思います(笑)。
ーー『GINZA』が生まれ変わってから衝突した壁はありましたか?
ありました。それは、私自身が「ラグジュアリーブランドがいかにしてラグジュアリーであるか」ということを、本当の意味で理解できてなかったからなんです。それは、私があまりに一般の読者と同じ価値観だったからだと思うんですけど。「作りはいいんだろうけど高い。だったら、似たようなデザインのでいいんじゃないか」というごく普通の考えで、私はずっと普通に育ってきたんですよね。でも、ラグジュアリーブランドの根幹には、「それじゃなきゃいけない理由」が詰まっていて、だから、これだけの値段が付いているし、世界中が熱狂するんだということが『GINZA』を通じてわかってきました。
ーーラグジュアリーブランドの素晴らしさを実感できたんですね。
元々あまのじゃくな性格だったから、トレンドに飲まれることは長いものに巻かれることだと思っていたし、個性を出すことが自分のファッションであると頑なに信じてた。でも、「ブランドって一体何?」というところから始まって、デザイナーやディレクターたちのとてつもない才能や情熱に打ちひしがれたり感動しているうちに、理解できるようになったんですよね。ラグジュアリーブランドという大きなピラミッドのトップにいる人たちは、アートや映画、音楽をリスペクトしていて、それらにインスパイアされたものをファッションとして表現していると。そのときに、全部が腑に落ちました。
ーー確かに『GINZA』には、根元にあるカルチャーとともにファッションをひもとく面白さがありますよね。
自分が知らなかったからこそ、若い読者にも「いかにその商品が面白くて素敵なのか」ということを伝えたくて。まずは、興味を持ってほしいんです。ファッション業界は、ありとあらゆる才能と努力と情熱が凝縮されていて、もちろんお金もですけど、1枚1枚ミルフィーユのように緻密に積み上げられてきた文化なんです。だから、敬意を持たずに生半可な気持ちではファッション誌を作ることはできないなと。
---『GINZA』中島編集長インタビュー2/3は彼女の編集理念と『Olive』や『relax』の復刊について。