【編集長ブログ】今週買ったモノ--大人買いロストヴァージン

2014.12.21

雑誌『Libertin DUNE』(“りべるたんでゅーん”と読む)をコンプリートした。と言ってもまだ8号しか刊行されていないのだが。

今週、忘年会前にちょっと時間が空いたのでブックオフに行ったら、同誌vol.1を見つけたので、すかさず購入。そして次の日、代官山蔦屋書店に行ったらバックナンバーフェアをやっていたので3~8まで思わず買い占めてしまった笑(2は以前ブックオフで買った)。人生初の大人買いだ。自分への誕生日クリスマスプレゼントみたいなものだ。

私は前身である『DUNE』も収集している。ブックオフに行ったらいつもDUNEを探すことから始めるのだ。蔦屋にDUNEのバックナンバーも置いていたのだが、ビンテージ価格ということで値が張ったので、こちらはあきらめた。

この雑誌は私を魅了してやまない。何と言うか、編集者全開!といった感じが堪らないのだ。創刊者は故・林文浩氏。氏亡き後は妻の香寿美氏が編集長として率いている。当初はモード誌だったが、今はカルチャーアート誌といった感じだろうか。取材対象やコントリビューターなど編集部の好みやネットワークが如実に分かりやすい雑誌だ。ソフィア・コッポラや成山画廊、マリオ・ソレンティ、オリヴィエ・ザームなどがよく登場する。ソフィアの名作『ロスト・イン・トランスレーション』は、林氏がセックスピストルズの「God Save the Queen」を熱唱するのを見て思いついたものとインタビューに書かれている。実際作中にて彼がカラオケで歌うシーンがあるのだ。

DUNEは写真集のようなビジュアルページの他、インタビューページが充実している。とにかく文字量が多い。そして読ませる。対象と内容が面白いからだ。

蛇足だが、先日ある雑誌の編集長と話した折、紙とウェブの決定的な違いはテキスト量じゃないかという話になった。デジタル媒体は何文字でも載せられるが、目の疲労とデバイスの利便性から読める量が限られており、実は文字量を少なくせねばならない。スマホ隆盛の現代では最適なテキスト量は500字前後であろう。反面、プリントメディアは紙幅の制限があるように見えるのだが、単純にページを増やせば全文載せることができ、しかも読む方の負担が少ない。3,000字だとスマホなら5~6ページに分割するところ、見開き2ページで済む。

話しを戻そう。2008年に休止し、2011年に「Libertin(自由主義者、無頼者)」が付いて復活した後もDUNEのテイストは変わらない。そして創刊者亡き後もそのイズムは受け継がれている。

Libertin DUNE立ち上げについて、林氏はこう書いている。「発想の自由、表現の自由について真剣に考えるべき」と。この姿勢が読む者を慄わせ、他にはない媒体としての存在意義を確固たるものにしている。

また蛇足だが、先日会った某編集長(前者とは別。因みに両者共ただいま絶賛取材中のモード誌クロニクル第3部の取材相手)はこう言う。「スタッフには自分の好きなものをとにかく追求しろ。それだけしか言わない」。左に同じ。シンプルかつ究極、そして最も難しいことだ。

これを実践していた偉大なる故人を偲びながらページを繰り、期待を胸に古書店に足を運ぶ師走なのだ。
Mitsuhiro Ebihara
  • 『Libertin DUNE』1~8号表紙
  • 『Libertin DUNE』裏表紙もカッコいい
  • 『Libertin DUNE』1号表紙はソフィア・コッポラ
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