ケリングは環境保全に必要な数量的目標を実行するために、大学関係者や専門家、NGOなどの協力を得て、二つのツールを導入した。
一つは、環境負荷を測定するツールで「環境損益計算書(EP&L/Environmental Profit and Loss account)」と呼ばれるものだ。通常は二酸化炭素の排出量はトン、排水はリットルという単位を用いるが、ケリングではすべてドルやユーロの貨幣単位で表している。この方法を用いると財務部門とも意思疎通が容易になり、企業としてのリスクマネジメントに役立つという。※グループ内のプーマは既に2010年にEP&Lを公表している。
グループ、及びブランドでこの共通指標を採用することで、投資の優先順位や、環境負荷を削減する手段の策定に繋がり、コストパフォーマンスの向上にも役立つ。こうした発想は、20世紀的な資本主義のビジネスモデルとは一線を画し、新たなビジネスの機会創出につながるというのが、ケリングの考えだ。
「現在の使命は、遅くとも2016年までにグループレベルのEP&Lを作成すること」とダヴォ氏は言う。
後日ケリングから、企業の気候変動対策のグローバルなデータベースを持つ唯一のNPOカーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP) が発表するクライメート・パフォーマンス・リーダーシップインデックス(CPLI)2014年版で、二酸化炭酸ガスの放出を削減し、気候変動にもたらすリスクを抑える取り組みに対して、A判定の評価を得たとのリリースが配信された。このA判定は世界187社にのみ与えられたもので、ケリングの真摯な取り組みを物語っている。
もう一つは、環境負荷を少なくしようというマテリアル・イノベーション・ラボ(MIL/Material Innovation Lab)の取り組みだ。MILは、最もサステイナブルな原材料(例えばオーガニックコットンやウールなど)の特定や、テキスタイル製造過程(染色やなめしの方法など)の研究をミラノ郊外の研究室で行っている。MILで開発された原材料は、グループ内のブランドに提案されるシステムだ。
温暖化に伴う大型台風や大洪水を引き起こす気候変動の話題は、ニュースやTVの情報番組で頻繁に取り上げられている。2015年末にはパリで、2020年以降の世界の気候変動、温暖化対策を話し合うCOP21が開催される。環境への配慮は消費者1人ひとりが避けて通れない問題となっているのだ。
3/3に続く。