話題の「LINE MUSIC」、“音楽×コミュニケーション”で業界の変革なるか

2015.06.16

定額制オンデマンド型音楽配信サービス「LINE MUSIC」が、6月11日から正式サービスをスタートした。スマートフォン隆盛の今、コミュニケーションツールとして欠かせないものとなった「LINE」が音楽との掛け算で、音楽業界に変革をもたらそうとしている。

サービス開始の当日には、Twitterのホットワード入りも果たし、公開後2日間で100万ダウンロードを突破、累計楽曲再生数は1,200万回を超え、という凄まじいスピードで普及している「LINE MUSIC」。

これまで国内の定額制音楽配信サービスとしては一般的だったラジオ型と異なり、いつでもどこでも聴きたい曲・アーティストを選択して再生やプレイリストの作成などを行うことができる、ダウンロードせずに再生可能なストリーミングによる音楽配信サービス。月額の料金は、500円(20時間/30日間)、1,000円(無制限/30日間)のプランに加え、学割も導入されている。

サービス公開時の第1弾としては、「三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE」や第57回グラミー賞で最多4部門を受賞した英シンガーソングライターのサム・スミス(Sam Smith)、英国のボーイズグループ「ワン・ダイレクション(One Direction)」など邦楽、洋楽、K-POP、アニメ・ボーカロイドなど幅広いジャンルのヒットチャートや新譜をベースに、人気アーティストを中心とした150万曲以上の楽曲ラインナップを揃え、「EDMまとめ」や「究極に眠れる」といった豊富なプレイリストなどを通じ、ユーザーの利用シーンや気分に応じて様々な楽曲と出会うことができるものとなっている。

しかし、ここまでならば「LINE」でなくとも実現可能だろう。「LINE」が得意とする“コミュニケーション”と掛け合わさることこそが、このサービスの最大の強みだ。

その内容としては、「LINE」で繋がっている友人やグループに、トークやアプリ上から楽曲やプレイリストを送り合うこと(※LINEアプリのバージョン5.0.0以上にて対応)や、送られた楽曲を「LINE」内のトークやタイムライン上で直接再生することができるというもの。

13年時点で、国内のスマートフォンユーザーの全体のうち70%以上(GlobalWebIndex社 調べ)が「LINE」を使用しているデータがある。今や、ファッションも、グルメも、エンタテインメントも“口コミ”の時代。気軽に情報をシェアできる「LINE」をアンオフィシャルな口コミの場と考えれば、「LINE MUSIC」のユーザーは、「おはよう」や「おやすみ」といった日常的な会話の中で、シームレスに音楽を登場させることが可能となり、アーティストやレーベル側にとって強力な味方となるだろう。

この“音楽×コミュニケーション”という掛け合わせは、Youtubeを「Facebook」などを介してシェアする場合に最近よく見かけられるが、対個人に向けた情報の“強さ”という意味では、相手からのレスポンスが求められる「LINE」は絶対的な強度を誇ることになるはずだ。

また、このコミュニケーションを取る相手は、友人や家族だけではなくなる。「LINE MUSIC」では、楽曲を提供するアーティストの公式アカウント開設も順次進めているとのこと(※サービス公開時より、102組のアーティストのLINE公式アカウントがLINE MUSICと連携している)。

公式アカウントを持つアーティストは、「LINE MUSIC」内のアーティストページにリンクが設置され、公式アカウントから楽曲配信やプレイリスト公開の告知などを行い、「LINE MUSIC」と公式アカウントを相互連携させることで、ユーザーとアーティストとの接点の拡大を図っていくというものだ。これが、トークアプリ「775」のような著名人とのインタラクティブなコミュニケーションにまで発展していくのかは不明だが、アーティストとの距離が近くなるのは確かだろう。

「LINE MUSIC」株式会社の代表取締役社長・舛田淳氏は、「『LINE MUSIC』は、これからの時代のユーザーと楽曲やアーティストの新たな接点や楽しみ方を創出することを目的に、これまでサービス公開の準備を進めてまいりました。特に、500円のベーシックプランや学割プランは、今まで音楽サービスに馴染みがなかった方や若い世代の学生ユーザーにこそ、様々な音楽コンテンツに触れ、音楽との出会いやそこから生まれるコミュニケーションを楽しんで欲しいという想いがあり、実現しました。今後も、『LINE MUSIC』内の楽曲や参加レーベル・アーティストの拡充を積極的に行い、ユーザーの音楽への関心を高め音楽産業の盛り上げを図り、No.1の音楽配信サービスを目指して取り組んでまいります」とコメントを発表している。

新入社員が「LINE」で欠勤報告をしてくる、といった話が今年の4月にニュースで取り上げられるなど、10代・20代の若年層にとって欠かせないコミュニケーションツールとして、日常に浸透している「LINE」。賛否はありながらもYoutubeやニコニコ動画など、無料で音楽を楽しむことが当たり前となったこの世代に、今後どのように活用され、受け入れられていくのかに注目が集まりそう。また、「LINE MUSIC」のサービス開始と同時期にAppleも定額制の音楽配信サービス「Apple Music」を発表しており、今年は音楽業界にとって大きな転換点となりそうだ。
編集部
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