ファッションデザイナーは時に魔術師と化す。キラキラと輝く魅力的な作品を世に生み出し、多くの人の心を狂気のごとく惹きつけるーー7月3日パリ・オートクチュール・コレクション初日、ユイマナカザト(YUIMA NAKAZATO)は居合わせたオーディエンスに見事に魔法をかけ異世界へと誘った。
2016-17年AWオートクチュールコレクションのトップバッターでショーを開催。近年の日本人デザイナーのパリでの活躍は目覚ましいが、正式ゲストデザイナーとしてオートクチュールコレクションに日本人が参加するのは、森英恵以来12年ぶりのこと。また、ブランドとして海外でショーを行うのは初めての経験だ。YUIMA NAKAZATOデザイナー・中里唯馬は2004年アントワープ王立アカデミーを卒業後、欧州の学生コンテストのインターナショナル・タレント・サポート(ITS)で2年連続受賞するという前代未聞の快挙を成し遂げ、2009年自身の名を掲げたメンズブランドを立ち上げた。近年はプロダクト制作のみならず、レディー・ガガ(Lady Gaga)やEXILEのライブ衣装、実写版映画「ルパン三世」、宮里亜門の舞台「SUPERLOSERZ」の衣装を手掛けるなど、国内外のアーティストに信頼を置かれるデザイナーへと成長している。
ショー翌日の取材では、コレクション内容の詳細や開催までの経緯、今後の展望を訊いた。そこで見えてきたのは、私たちの想像を遥かに超える中里の才能と無限に広がるファッションの可能性。
ーー今回のオートクチュールコレクションのインスピレーション源、テーマを教えていただけますか?
昨年訪れたアイスランドの地にインスピレーションを受けました。SF映画のロケ地にもなったそこは、人工物の一切ない岩や氷といった自然のものだけで成り立つ世界。地球とは思えない、まるで別の惑星にいるような感覚に陥るほど幻想的な風景が広がっていたんです。その貴重な体験を元に、テーマを「UNKNOW(未知なるもの)」とし、氷、空、海、オーロラなど自然現象の中の色の変化をコレクションに落とし込みました。
ーーショーもまるで地球外のような、フューチャリスティックで不思議な空間を演出していたのが印象的です。静寂の中に、ブランドの強いメッセージ性を感じました。コレクションを通じて最も伝えたかったことは何ですか?
"体から自由に作る"という未来のオートクチュールを示したかった。これまでの衣装製作で取り入れてきたストラタシス(stratasys)社製(http://www.stratasys.co.jp/)の3Dプリンタやカッティングプロッタの最新テクノロジーは、新しい生産の可能性に満ち、服の概念さえ変えてしまうほどファッションの未来を握っていると思います。布からパターン制作に入るのではなく、人の体をスキャンしてデータ化したものを3Dプリンタで形成し、服に仕上げる。これを使えばウェブで受注し、世界のどこでも3Dプリンタで出力可能になります。オートクチュールのように、テクノロジーによって一人ひとりに合わせたオーダーメイドの一点物の服が生まれていくのです。それがさらに普及し、現在の既製品、普段私たちが着ている服にも及ぶのではないかと考えています。
ーー実際に今回のコレクションで、最新テクノロジーを取り入れた部分を詳しく教えてください。
コレクションピースは全て、"ホログラム"と呼んでいるフィルム素材を使った有機体が連なり形になっています。フィルムメーカーと協業し製作した特殊なこの素材は、強度や質感にこだわって6年の歳月をかけました。試行錯誤の連続でしたが、ようやく納得のいくものに進化し今回のコレクションで発表できました。
アイスランドで撮影したオーロラの写真を素材に写し、カッティングプロッタで細かく正確にカットを入れ、最後にすべてを折り紙のように折って1体の有機体が完成。
これを1000体ほど作り、体に沿って連結させて服に形成するのです。最新テクノロジーだからこそ為せる技、そして最終工程で人の手を加えて服に息を吹き込みます。ショーの1ヶ月程前からスタッフやオートクチュール科の専門学生に手伝ってもらいながら、なんとか間に合わせられました。 透明のブレスレットは江戸切子の伝統的な技術で繊細にカットされ、ブルーの球体は漆を用いて、中には粉末状にした"ホログラム"を入れています。デジタルのテクノロジーと人の技術が融合しているのです。
--「テクノロジー×伝統、過去×未来、デジタル×リアル「相反する2つの物の融合で、新たな側面を生み出す」--YUIMA NAKAZATO 中里唯馬 2/2【INTERVIEW】」へ
2016-17年AWオートクチュールコレクションのトップバッターでショーを開催。近年の日本人デザイナーのパリでの活躍は目覚ましいが、正式ゲストデザイナーとしてオートクチュールコレクションに日本人が参加するのは、森英恵以来12年ぶりのこと。また、ブランドとして海外でショーを行うのは初めての経験だ。YUIMA NAKAZATOデザイナー・中里唯馬は2004年アントワープ王立アカデミーを卒業後、欧州の学生コンテストのインターナショナル・タレント・サポート(ITS)で2年連続受賞するという前代未聞の快挙を成し遂げ、2009年自身の名を掲げたメンズブランドを立ち上げた。近年はプロダクト制作のみならず、レディー・ガガ(Lady Gaga)やEXILEのライブ衣装、実写版映画「ルパン三世」、宮里亜門の舞台「SUPERLOSERZ」の衣装を手掛けるなど、国内外のアーティストに信頼を置かれるデザイナーへと成長している。
ショー翌日の取材では、コレクション内容の詳細や開催までの経緯、今後の展望を訊いた。そこで見えてきたのは、私たちの想像を遥かに超える中里の才能と無限に広がるファッションの可能性。
ーー今回のオートクチュールコレクションのインスピレーション源、テーマを教えていただけますか?
昨年訪れたアイスランドの地にインスピレーションを受けました。SF映画のロケ地にもなったそこは、人工物の一切ない岩や氷といった自然のものだけで成り立つ世界。地球とは思えない、まるで別の惑星にいるような感覚に陥るほど幻想的な風景が広がっていたんです。その貴重な体験を元に、テーマを「UNKNOW(未知なるもの)」とし、氷、空、海、オーロラなど自然現象の中の色の変化をコレクションに落とし込みました。
YUIMA NAKAZATO 16-17AW オートクチュールコレクション
ーーショーもまるで地球外のような、フューチャリスティックで不思議な空間を演出していたのが印象的です。静寂の中に、ブランドの強いメッセージ性を感じました。コレクションを通じて最も伝えたかったことは何ですか?
"体から自由に作る"という未来のオートクチュールを示したかった。これまでの衣装製作で取り入れてきたストラタシス(stratasys)社製(http://www.stratasys.co.jp/)の3Dプリンタやカッティングプロッタの最新テクノロジーは、新しい生産の可能性に満ち、服の概念さえ変えてしまうほどファッションの未来を握っていると思います。布からパターン制作に入るのではなく、人の体をスキャンしてデータ化したものを3Dプリンタで形成し、服に仕上げる。これを使えばウェブで受注し、世界のどこでも3Dプリンタで出力可能になります。オートクチュールのように、テクノロジーによって一人ひとりに合わせたオーダーメイドの一点物の服が生まれていくのです。それがさらに普及し、現在の既製品、普段私たちが着ている服にも及ぶのではないかと考えています。
ーー実際に今回のコレクションで、最新テクノロジーを取り入れた部分を詳しく教えてください。
コレクションピースは全て、"ホログラム"と呼んでいるフィルム素材を使った有機体が連なり形になっています。フィルムメーカーと協業し製作した特殊なこの素材は、強度や質感にこだわって6年の歳月をかけました。試行錯誤の連続でしたが、ようやく納得のいくものに進化し今回のコレクションで発表できました。
アイスランドで撮影したオーロラの写真を素材に写し、カッティングプロッタで細かく正確にカットを入れ、最後にすべてを折り紙のように折って1体の有機体が完成。
ホログラム素材にカットを入れ、折り紙のように折って作られた有機体
ホログラム素材を取り入れたブーツ
これを1000体ほど作り、体に沿って連結させて服に形成するのです。最新テクノロジーだからこそ為せる技、そして最終工程で人の手を加えて服に息を吹き込みます。ショーの1ヶ月程前からスタッフやオートクチュール科の専門学生に手伝ってもらいながら、なんとか間に合わせられました。 透明のブレスレットは江戸切子の伝統的な技術で繊細にカットされ、ブルーの球体は漆を用いて、中には粉末状にした"ホログラム"を入れています。デジタルのテクノロジーと人の技術が融合しているのです。
漆と粉末状のホログラムを用いたブレスレット
--「テクノロジー×伝統、過去×未来、デジタル×リアル「相反する2つの物の融合で、新たな側面を生み出す」--YUIMA NAKAZATO 中里唯馬 2/2【INTERVIEW】」へ