もう11月。この3連休には多くの大学で学祭が開かれている。近くの早稲田や学習院も絶賛開催中だった。日本を代表する服飾教育機関・文化学園もこの文化の日に被せて毎年実施している。そんなこともあり、ちょっと間が開いてしまったが夏休み直前の7月に跡見学園女子大学、夏休み明け直後の10月に慶應義塾大学にて講義したことを回想しよう。
跡見ではファッションの授業だったので、弊媒体を例にウェブファッションメディアについて、慶應では美学美術史専攻の先生による読書するゼミ形式の授業だったので、ファッションや美学、メディア論について話した。なんて大層な感じだが、実際はざっくばらんに、インタラクティブに明け透けに、3・4年生達とコミュニケーションした。
色々聞いてみたが、ざっくり言うと現代っ子はファッションに興味がない。確か繊研新聞さんのアンケートに服飾専門学校生が好きなブランドはファストファッションばかりという結果が出ていたかと思うが、その通りであって全身コーディネート1万円が本当に普通だった。
そしてデジタルネイティブ世代だけあり、雑誌を読まない。これも真実。情報を集めるにはスマホでネット、そしてその中のツイッターやフェイスブックなどのSNSアプリを使う。1ヶ月の支出構成比を聞いてみると、交際費(飲食含む)と携帯代が大半を占める。因みに母数は跡見約300人、慶應約15人。装飾品は安く、情報は無料で、が現代っ子の実情だ。
私が学生だった頃と比較すると、外資系のファストファッション企業が多く参入しており、安く手軽にトレンドの洋服を求めることができるようになったことは利点だと思っていた。ファッションに興味を持つハードルが低くなると思ったから。しかし今の学生諸子は、就職し、稼ぐようになったからといって服飾費に大枚をはたくような雰囲気ではない。「いいじゃん、この値段でこのクオリティーなら」といった風潮だ。つまりファストでストップするのだ。
これを突き詰めると、少子高齢化が進む日本ではハイファッションはどんどん嗜好品となり、高齢化と共にブランドも年を取っていき、終いにゃ無くなる…ということ。まあいきなりそんなことにはならないと思うが、市場は徐々にシュリンクしていく。
加えて、高い物にはそれなりの背景があり、物を作るのに金と時間が掛かるということが認知されていかないことが大きな問題だ。そもそもの感性や眼識が培われないからね。慶應の先生は、眼識とは知性とおっしゃっていた。文化を作るのは知性だ。若年層への啓蒙をすることもウェブメディアの一つの使命であろう。未来の文化を作るためにも。
さて、10月末からディオールの大規模展が始まったが、学生招待プログラムがあるとのこと。ファッション学校だけでなく、一般大学も是非に参加してもらいたい。めくるめく美の世界に浸ってもらいたい。そして銀座にある様々なショップや百貨店を巡って、見て触って着てみてはいかがだろうか。1日くらい授業で銀ブラしてもいいじゃないか。そうじゃないと、本当にファッションが終わる日がやってくる。