18日夜に「青森大学男子新体操部」の公演に行って来た。舞台は国立代々木競技場第二体育館。アリーナの中央には新体操用のマットが敷かれ、27名の部員による様々なアクロバットが繰り広げられた。光の演出や音楽と部員達の動きが重なり合う度に、2,500人を超える観客からは拍手が起こり、ため息がもれる。
このイベントはイッセイミヤケグループが主催。新ブランド「オムプリッセイッセイミヤケ(HOMME PLISSE ISSEY MIYAKE)」の、メゾン初となるメンズプリーツをここで披露したのだ。引き締まった団員の激しい体の動きを妨げない、カラフルなサルエルパンツが印象的だった。
会場を「巨大な水の塊」に例え、コレオグラフィーを担ったのは、ブロードウェイのスパイダーマンの演出やGap広告の振り付けで有名なダニエル・エズラロウ(Daniel Ezralow)氏。彼は90年代からイッセイミヤケのパフォーマンスにかかわっている。
幕開けにはアリーナを覆うほどの1枚の大きな布を団員が操作し、様々な形や動きを表現。一生氏は「一枚の布」から衣服を形作ることに取り組み続けてきた。その意味で、とてもブランドらしい演出だろう。また、舞台でうねる巨大な布はまさに波打つ水面のよう。迫力のオープニングの後、フープやバトン、ロープなどを操りながら魚やエビ、イルカのように団員がアリーナを自由に飛び回った。
目を見張ったのは、団員の動きを照らす絶妙な光の演出と、動きに合わせてアリーナの床にプロジェクションされたモーショングラフィックス。ライティングは照明デザイナーの海藤春樹氏が担当。グラフィックスはウェブデザイナー中村勇吾氏によるプラグラムだ。この演出はペイントの染みのように選手の足下を飾ったり、「がんば」など部員同士の掛け声を文字で表示し、学生らしいムードを醸し出した。
エンディングでは選手が衣装を脱ぎ、アリーナに配置して退場。体の動きとフォルムの探求がポエティックに表現され、激しい動きを絶え抜いたHOMME PLISSE ISSEY MIYAKEのガーメントが印象に深く残る演出となった。
メンズプリーツのデビューに加え、東日本大震災後の東北支援の意図を持った本イベント。一生氏がディレクターの1人を務める六本木の21_21デザインサイトでも、東北のものづくりにフォーカスした展示が震災後に行われている。今回は日本発祥の競技で、東北で育まれているがまだまだ知名度の低い男子新体操を紹介した。青森大学新体操部は2012年全日本選手権で4年連続9度目の優勝を果たした、トップクラスのチーム。1時間余りに及ぶ隙のないスペクタクルは圧巻だった。
一生氏のガーメントを見せるセンスと、様々なアクターを巻き込みながらブランドをプロモーションする力も同じく圧巻だ。