3月6日グランドオープンとなる伊勢丹新宿店リモデルでは、核となる売り場がエスカレーター周りに設けられている。ファッションだけでなく、五感に訴える売り場を目的とした「パーク」だ。
このパークは、リモデルの設計を担当した丹下憲孝と森田恭通による発案だが、彼らと協業して同スペースのアートディレクションを行う人物がいる。ホワイトウォール代表、田辺良太がその人。アートやファッション関係のプロデュースを行ってきた彼に、伊勢丹新宿店において小売りとアートをどのようにシナジーさせるかを聞いた。
――新宿店再開発において、田辺さんの具体的な役割は?
2階から4階パークの企画アドバイスという形で携わっている。各フロアのコンセプト、ブランドや客層などを念頭に、ファインアートや商業美術、ファッションフォトグラフィーなどの要素を導入することが目的だ。
――今まで物販店にかかわったことは?
今回が初めての取り組み。今まではエキシビションやギャラリーのマネジメントなど、作品を見せるための空間に携わること多かったが、今回は売り場なので、モノを見せるための場所ではなく、アートを見に来る人がいるわけではない。いかに買い物客に足を止めてもらうかを考えていて、それは新しい感覚だと感じている。
買い物に着た時にふと目に触れたものが、いつもと違っていて、興味を持つ。そして、また次に立ち寄ったときに商品以外に新しいプラスアルファがあって、更に興味を持つことで、来店頻度が高くなることが理想だ。東京のギャラリーで何をやっているか垣間見れ、ニューヨークの新しいカルチャーやファッションのムーブメントを知ることができる場が実現できたらいいかと。
――具体的に進行していることは?
私がかかわる企画がスタートするのは3月6日のグランドオープンから。それに向けてバイヤーからヒアリングし、彼らをギャラリストに引き合わせたり、ニューヨークのエージェントに紹介などしてきた。
まだ構想段階だが、2階はリアルクローズのフロアなので東京のアートにフィーチャー、3階はモードフロアなのでニューヨークの最新ムーブメントを、4階はエターナルなバイイングなので、日本の伝統とファッションを融合した良質なものを届ける企画を考えている。現在東京では六本木アートナイトやG トーキョーなどアートフェアが多い。活性化しているこのムーブメントを伊勢丹新宿店でも感じられるように、ギャラリーに協力してもらい、作家の作品を展示、購入できるようにしたい。
普段からギャラリーに足を運ぶ人はなかなか少ないと思うので、ギャラリーが伊勢丹に出張してもらって、買い物客に東京の今のアートに触れてもらう。そしてギャラリーにも流れてもらうというような循環を作りたい。
――注目しているアーティストなどいたら教えて下さい。
アーティストというより、インターネットの普及によるムーブメントが面白い。3階ではニューヨークで発祥した画像を使ったSNS、ヴイファイルズ(V FILES)を用いたイベントを予定している。また、東京はギャラリーやフェアがたくさんある。以前に比べてアーティストも増えたので東京のアートシーンには注目したい。