メルセデス・ベンツ ファッション・ウィーク 東京 2013 S/S(Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2013 S/S)のオープニングでショーを行った「ファセッタズム(FACETASM)」。
セレモニーのシークレットゲストとして登場した安室奈美恵の新曲「Damage」のミュージックビデオの衣装を手がけるなど、東京のファッションシーンにおいて俄然、注目の存在だ。伊勢丹新宿店3階ザ・ステージで行われているポップアップショップの「Fashion is...」では、1月30日からトーガ、カラー、アンリアレイジなど東京ファッションを牽引してきたブランドと並んで、ニューコレクションも展開される。
デザイナーである落合宏理氏に東京のモードについて、そしてブランドの将来について話を聞いた。
--3シーズン、ランウェイをやってみて、クリエーションに対する意識の変化は?
ショーを続けてきたことで、知名度は確かに上がったが、賛否両論さまざまな意見にさらされるようになり、やめられない戦いが始まったという思いだ。コム デ ギャルソンの川久保(玲)さんが言っていた、この世界での”戦い”というのが何なのか、少しわかった気がする。アンダーカバー(UNDERCOVER)などの先輩たちもこんな経験しながら勉強していったのかなと。その戦いには勝つしかないと思っている。もっと多く人に見てもらって、もっといろんな意見を聞きたい。そして、あくまで王道な戦い方をしたい。メインストリートで戦った上でアンダーグラウンドなこともできる、そんなブランドを目指している。ショーをやっているのもそのためだ。
--2013年春夏コレクションのテーマは?
東コレのオープニングでは、いつもと違う層が観客であるということも意識して、レッドカーペットを敷き、ゴージャスに演出した。コレクションではクラシックとグラフィティをミックスして、ファセッタズムなりのエレガンスを表現している。ハイビスカスのモチーフなどを含め、グラフィティは80年代から活動しているグラフィティアーティストの「ネズム」に依頼。レースにグラフィティの刺繍を施したアイテムなども、ファセッタズムにしかできないデザインで、今の東京に必要なものを追求している。クリエーションでは、すべてにルールを決めずにいろいろなことに挑戦したいと常に思っている。
ショーで多くの人たちに服を見てもらえるようになって、若い人たちについてきて欲しいという気持ちが、さらに強くなってきている。以前はショップでも、メンズをサイズダウンしたものがよく売れていたが、最近ではコレクションラインが売れている。その動きを見ても、自分たちがやってきた路線は間違っていないと感じている。
ショーをしたことで、工場からのオファーが増えた。日本ではデザインに凝ったバッグでも、ハイクオリティのデニムでも、あらゆるものを作ることができる技術的な背景がある。工場には服が好きな人たちがいて、僕自身もテキスタイル会社にいたことがあるので、彼らの思いもわかる。応援してくれている人たちに応えながら、一緒に成長していきたい。
--東京ブランドはモードとストリートの中間と評されるが?
東京ブランドのやってることが本当のモードかというと、ストリートのような気もするが、それでいいのだと思う。何と言われようが、それは欧米ではつくれないものであり、それが今の東京のスタイル。それをつくり続けることでいつか、モードの真似ではない東京ならではのモードになるのではないかと思っている。
--海外は意識している?
同い年の(相澤陽介氏がデザイナーを務める)「ホワイトマウンテニアリング(White Mountaineering)」が先日、ピッティ(世界最大のメンズウェアの見本市)でショーを開催した。ファセッタズムも今や売り上げの3分の1近くが海外だ。(セレクトショップの)ITとかに呼ばれて香港に行けば6~7つのメディアの取材を受ける。もっと世界に出て結果を出して行かなければならない時期に来ていると思う。
--今後のファセッタズムの目指すものは?
デビューから6年経つが、メンバーは今も変わらない4人のスタッフ。当時から、人の心に響くような服をつくりたいと思ってきた。僕たちのようなインディペンデントなブランドが、東コレのオープニングを飾ったり、憧れのブランドとショップで並べるようになったというのは感慨深く、これからもインディペンデントであり続けたいと思っている。2012年は1月のピッティ参加から始まって、長い1年だったが何かが動き出した年だった。今年も東コレのトリを飾るVERSUS TOKYOでのショーなどが予定されており、それに見合うクリエーション、ビジネスをやっていきたい。