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パナソニック株式会社 アプライアンス社デザインセンターが、京都の伝統工芸後継者によるクリエイティブユニット「GO ON」をプロジェクトパートナーに迎え、人の五感や記憶に響く家電のプロトタイプを開発。歴史の積み重ねを感じる町家「京都もやし町家」(京都市下京区)にて作品が発表された。
同社は、日本の感性とものづくりの原点を探り、新たな家電デザインを外部の視点を取り入れて研究する共創プロジェクト「Kyoto KADEN Lab.(京都家電ラボ)」を15年11月から開始。第一弾として、「GO ON」と日本のパナソニックならではの新しい“家電の価値”を追求、約1年に渡り体験価値を生み出す家電を開発してきた。今回のプロジェクトコンセプトは「Texture」。各所にIHが埋め込まれた木製の長いテーブルで、インスタレーションが行われた。
■銀釉
お茶の豊かさを五感で愉しむ茶器。朝日焼に施された銀彩の伝統技法とIH技術の組み合わせで生まれた磁器の湯。木製のテーブルに埋め込まれたHIによって、朝日焼の湯盤が、お茶に最適な60度の温度で湯を沸かす。
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■響筒
手のひらで音の響きを感じ、表情を愉しむコンパクトスピーカー。茶筒の蓋をそっと開けた瞬間から、音が流れる仕組み。開化堂の茶筒の特徴でもある経年変化を愉しみながら使い込んでいく新しい電化製品。
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■水甬
IHからの非接触給電によって水を冷やし、回転水流を起こす中川木工芸の木桶。採れたての野菜を川の水流で冷やした懐かしい原風景を想像させる作品。井戸水の冷んやりとした温度に設定されている。
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■月灯
影と光を愉しむLEDペンダントライト。竹の優しい木漏れ日と、丸くぼんやりと光る灯を眺めて愉しむ照明。
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■竹コロ
公長齋小菅の“やたら編み”という技法を用い、竹の隙間から溢れる炎やマグマのような暖かい光を愛でるLED証明。触ることによって竹の経年変化も愉しめるオブジェ。
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■網香炉
体験、記憶を膨らませる香炉。バッテリーによる熱源とチタンを組み合わせた香炉。鴨川にある丸い石をイメージし、手にとりやすい楕円で形成された。
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■銀砂ノ酒器
IHからの非接触給電で銀砂(金属粒)を冷やし、冷酒を愉しめる木桶。中川木工芸による白木の桶に広がる銀の砂に器をうずめて冷やす作法。
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■燗酒器
桶の制作技法で作られたIH対応の木製の燗徳利。下に敷いているガラスの厚さを変えることで“人肌燗”、“ぬる燗”、“上燗”と好みの温度制御が可能。
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■織ノ響
音と織で空間を作るパーテーション。300年以上の歴史を持つ、西陣織に織り込まれた金銀箔技術を利用した作品。箔がセンサーに反応して、心地よい音を奏でる。
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クリエイティブユニット「GO ON」
伝統工芸を“技”と“素材”にまで解体し、まったく新しい“モノづくり”を推進することを目的に12年に結成したユニット。メンバーは、西陣織「細尾」の細尾 真孝、茶陶「朝日焼」の松林豊斎、竹工芸 「公長齋小菅」の小菅達之、茶筒「開化堂」の八木隆裕、京指物「中川木工芸」の中川周士、京金網「金網つじ」の辻徹。