スタイリストの山口壮大ディレクションによる東京デザイナーズブランドとコラボレーションした浴衣が、伊勢丹新宿店とテキスタイルメーカーひなや京都(HINAYA KYOTO)で販売されている。
ファッションヘッドラインでは、本企画に参加した「アンリアレイジ(ANREALAGE)」デザイナー・森永邦彦氏に、これからの浴衣にについて話を聞いた。
ーー今回、取り入れた日本の染色・織の技法は?また、その技法を採用した理由は?
「平面を立体化させる」をコンセプトにデザインを行った。新しい概念の三次元の「yukata」は平面であるべきことに疑問を呈し、浴衣の上半身を立体化させた。
極端な凹凸をもつ浴衣は、展示されている状態では三次元的な造形に見えるが、人が着用をすることで立体的な輪郭を失い、ドレープのある浴衣へと変貌する。
上半身部分を立体的に縫製しているため、おはしょりでゆとりを隠しオーソドックスに着こなすことも、敢えてシルエットで遊び洋服のように着こなすことも可能とした。
ーー洋服と浴衣をデザインすることの最大の違いは?
浴衣は平面パターン的であり骨的、洋服は立体パターン的であり肉的。古代ギリシャやローマの服に見るように、肉体を意識して一枚の布を身体に巻き付けてひだを重ねるようなやり方を美としてきた欧米ファッションの美徳と、肩で着て腰でしばるというような骨を意識した平面的なシルエットを美としてきたかの違い。
ーー実際に浴衣を制作して苦労した点、新しい発見は?
同じ色一つとっても、その色の意味は相対的であるということ。上半身に五つの紋が入れば、無地のものは葬儀や法事の場に着用する「喪服」に、裾に模様が施されたものはお祝いの場に着用する「留袖」となる。
ーー今回の浴衣のデザインで伝えたいメッセージは?
浴衣としてのパターン定型は一つ。様々なシルエットがある洋服と違い、フォーマットが同じだということ。その同じフォーマットを様々な身体が共有することに可能性を感じた。
【プロフィール】
1980年、東京都生まれ。早稲田大学、バンタンデザイン研究所卒業。2003年から活動を開始。05年、ニューヨークの新人デザイナーコンテスト「GEN ART 2005」でアバンギャルド大賞を受賞。 06年より東京コレクションに参加。11年、第29回毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞受賞。7月12日より金沢21世紀美術館にて展覧会「ア・カラー・アン・カラー(A COLOR UN COLOR)」が開催される。