【PRESSブログ】現代アートで存在感を増す「ロシア」

2013.03.18

ロシアの現代美術にドキドキです。

ロンドンのサーチギャラリー(Saatchi Gallery)で6月9日まで行われている、ロシア現代アート展示へ行ってきました。アートコレクターであるチャールズ・サーチ卿が選ぶロシアの若いアーティスト達による作品は、ソ連崩壊以降の思想的・経済的なとまどいや、貧しさが特徴的に表現されていて、とても強い印象を受けました。

「ペレストロイカも自由主義も幸せにしてはくれない」と、そんな憤りを感じる鬱でドライな作家達を数名紹介します。実は……何度聞いても彼らの名前を覚えられないのが悔しいのですが(笑)。

ボリス・ミハイロフ(Boris Mikhailov)
90年代のソ連崩壊後の貧しいウクライナの人たちの写真を展示しています。彼の作品に登場する人たちの現実は、それはそれは強烈です。

ヴァレリー・コシリヤコフ(Valery Koshlyakov)
彼の作品は、継ぎ接ぎのボール紙上に巨大な「帝国」を象徴する建築物の絵をドローイングしたもの。ボロボロに見える建築物のふてぶてしさと、崩れそうな素材感が、「思想」の影響力ともろさを表現しています。

イリナ・コリナ(Irina Korina)
廃棄物を素材にした彫刻作品を展示していました。ゴミを素材にすることで、資主義が無駄なものの再分配を行うシステムに過ぎないことを皮を込めて表現しています。

ヴィケンティ・ニリン(Vikenti Nilin)
ソ連時代に建てられた団地の窓枠に人を座らせた写真を展示しています。高所を全く怖がらない様子の人々に、強さと異様な鈍さを感じます。写っている人達が耐えている辛い日常を反映しているようです。

リーマンショックを背景に、米・ウォールストリートでは2年前に「オキュパイムーブメント」が発生し、アート界では「アクティビズム」や「コモンズ」「シェア」の考え方が強くなってきています。自由主義の神話が崩れたことで、新たな目線を表現しようと色んな模索が行われているのです。そんな中、激動の「フェールド・ユートピア」を身をもって経験したロシア人達が作る作品は、物凄く現代的でとても重要です。

今から100年前のロシア構成主義とアバンギャルド運動以降、美的な意味で国外での発展を目にすることが無かったロシアですが、ここへ来て俄然、存在感を増してきました。その歴史的経験から、我々が向かう先の未来を見せてくれるのではないか……。

そしてこのロシア展示を観て、アートこそ最も繊細に、そしてダイレクトに「今」を表現する手段なのだなぁと1人、春の香りを感じるロンドンでドキドキしてしまいました。
Maya Junqueira Shiboh
  • Irina Korina, Capital, 2012
  • Boris Mikhailov, Case History 1997-1998
  • Valery Koshlyakov, High-Rise on Raushskaya Embankment, 2006
  • Vikenti Nilin, The Neighbours Series, 1993-Present
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