伊勢丹新宿店にて日本を代表するトップスタイリスト10人がデザインした浴衣が登場するポップアップイベント「ゆかたスタイリストメイド(STYLIST MADE)」が本館1階ザ・ステージにて6月19日から25日まで開催される。(会期終了後は伊勢丹本館7階呉服で取り扱い)
ファッションヘッドラインでは、スタイリスト10人にインタビューを敢行!リレー形式でご紹介。
今回は、スタイリスト・祐真朋樹氏。マサイ族がまとう伝統的なファブリック(マサイシュカ)からインスピレーションを得たという、赤と黒のギンガムチェック柄の浴衣。帯は光沢感がある素材でカマーバンドのように仕上げ、パーティー仕様でありながら、洗濯機で丸洗いできるなど、機能性も優れた浴衣を提案。モデルは、ファッションディレクターの大住憲生氏。
ーー今回、取り入れた日本の染色・織の技法は?また、その技法を採用した理由は?
本当は、裏も表とほぼ同じに染まる注染(ちゅうせん)という手法を使いたかったが、「自宅で洗濯できる浴衣」というのにもこだわったために素材が限られた。洗濯機で洗える素材だと注染は不可能とのことで、それで普通の捺染(なっせん)にした。
ーー本業のスタイリングと、洋服(今回は浴衣)をデザインすることの違いは?
いわゆる“ありもの”を組み合わせる「スタイリング」と、ゼロからデザインすることはもちろん全く違う。今回は浴衣という日本のトラディショナルウエアがテーマだったため、「デザイン」というよりは色や柄、それに機能性を追求した感じ。
個人的な考え方として、浴衣のような伝統着をベースから崩すようなデザインや着方には興味がなかったので、特別に「浴衣をデザインした」という意識はない。
ーー実際に浴衣を制作して苦労した点、新しい発見などがあればお聞かせ下さい
僕が無知だっただけだが、今は自宅の洗濯機で丸洗いできる浴衣があるということに驚いた。浴衣を含め和服は、着た後に洗い張りに出したりするのが面倒で、それも日本人を和服から遠ざける一因だとずっと思っていたので、“洗える浴衣”はナイス。今回も洗える素材を選んだ。蒸し暑い日本の夏、“洗える浴衣”はとても良いと思う。
ーー今後、スタイリングやデザインに取り入れていきたい日本の伝統の技は?
僕はいわゆる“洋服”を使ったスタイリングが主なので、特に意識して日本の伝統を入れていきたいとは思っていない。具体的な日本の伝統技術のディテールをスタイリングに入れるのは難しいが、日本文化の精神性を取り入れていけたらいいな、とは思う。ミニマリズムとか、侘び寂びとか……。 あるいは「フーテンの寅さん」の“愛嬌”とか…?!
ーーご自身が思う、一番浴衣が似合うかっこいい男性像は?
笠智衆(りゅう・ちしゅう)さん。
ーー浴衣をデザインさせたい国内外のデザイナーは?
アルべール・エルバスさん。お似合いになりそうだし。
ーーご自身が浴衣でお出掛けした思い出の中で、一番印象的な出来事はどんなことですか。また、おすすめのシチュエーションやスポットはどこですか?
京都市内で生まれ育ったので、子どもの頃は、毎年夏になると浴衣を着て大文字の送り火を見に行っていた。子供心に「風情があっていいな」と思ったのを憶えている。東京で浴衣を着て出掛けるなら、神楽坂とか、古い街並みの残っているところに行くのが良いのでは?
【プロフィール】
1965年生まれ。『POPEYE』でファッションエディターとしてのキャリアをスタート。雑誌の他、アーティストやミュージシャンなどのコマーシャルのスタイリング分野でも活躍。現在、『UOMO』『GQ JAPAN』などにも連載をもつ。初の著書『祐真朋樹の密かな愉しみ』(マガジンハウス)を6月27日に出版予定。