ピエール・エルメ2/2--高級菓子を作り出した"スイーツ界のピカソ"【INTERVIEW】

2013.11.07

――アートに対する造詣が深くそうした素養があるからこそ、スイーツの世界に新しい概念を持ち込むことができたのだと思いますが、ご自身では自分のクリエーションは他とどこが違うと思われますか?

私のクリエーションの手順には、特徴的なものがいくつかあります。まず、"風味の組み合わせ"からの発想です。いくつもの風味を組み合わせてケーキを作ったり、マカロンを作ったり、チョコレートを作ったりしています。2006年から発表している「フェティッシュ(fetish)」というシリーズは、こうした手法がベースになって今、30種類くらいあります。非常にユニークなものと自負しています。

もう一つは、一つの風味や味を追求し尽くしてベストな状態にするというものです。このシリーズには、「アンフィニマン(infiniment)」という名前をつけています。「無限」とか「究極」とかいった意味です。

更に、伝統的なスイーツを再解釈するということ。ババやミルフィーユ、タルトなどを別な形で、現代のスイーツとして甦らせています。

――「スイーツ界のピカソ」と評されていますが、それはご自身ではどういう意味だと思われますか?

仕事の仕方やプロセスは他のパティシエと全く違う独自のものだと思いますが、ただ、そういうやり方でパティスリー界全体に大きな影響を与えたとか、大きな変化をもたらしたかというところまでは、私は判断できませんね(笑)。他のパティシエと違うのは「オートパティスリー(高級菓子)」という新しい言葉、概念を生み出したことでしょうか。共同経営者であるシャルル・ズナティ(Charles Znaty)とブランドを設立した当時、私達がやりたかったのは、それまでにもあるようなパティスリーショップを開くということではなく、パティスリーの業界で高級ブランドを作りましょう、ということだったんです。それまでにもチョコレートの高級ブランドやケータリングの高級ブランドはありましたが、パティスリー界にはなかったのです。

――2005年にオープンした青山の店舗も、これまでのスイーツショップの概念を覆すような店舗でした。

店舗のクリエーションも大切にしています。日ではワンダーウォールの片山正通さんによくお願いしていますが、片山さんの作品を初めて見た時、この人とならうまくいくだろうという感覚がありました。フランスでは建築家のオリヴィエ・ランプルール(Olivier Lampereur)とコラボすることが多いです。店舗だけでなくパッケージ、ショップ、プレスにリリースする内容など、シャルルと私がすべて目を通しています。レシピは私1人で決めますが(笑)。

――15周年を迎えて、これが始まりとおっしゃっていましたが、これからどんなことを始めようと思われますか?

そうですね、プロジェクトは山ほどあります。私、個人のプロジェクトとしては、粉について研究するということです。

――パティスリーのベースとなる部分ですね?

おっしゃる通りです。結局、粉の味でケーキの味が決まります。例えばイスパハンのサブレは、同じ粉を使っても焼き方によって全く異なる味になります。粉をどのように扱うか、ある味をどうやってこの粉で表現するか、ということを研究したいと考えています。

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飯塚りえ
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