【ファッション再生】“リサイクルとリユースムーブメントを作る”イエリ社長×兼松繊維社長1/3

2014.10.17

ファッションはめまぐるしく移り変わる。モノトーンが流行ったかと思えば半年後はマルチカラーが街を彩る。大きく分けて春夏・秋冬と新作が発表され、この構造が常に新しさを生むファッションの新陳代謝となっている。しかし拍車が掛かり過ぎることで、大量生産・消費の衣服社会となった。多くの衣服が流通し、そして消える。生産コスト削減を追求するが故、人件費が安い発展途上国へと技術は流出し、国内の技術力が疲弊してきている。途上国では生産現場の劣悪な労働環境がたびたび報道されている。これからのファッションとはどうあるべきなのだろうか。イエリデザインプロダクツ社長・手塚浩二と兼松繊維社長・長ケ部良一が考えるのは“衣料品のリサイクル”だ。


手塚浩二社長(以下T):安いものを大量に作っても、世界に対して良いことは何もないということにそろそろ気づかなきゃいけない時期だと思う。ファッションは無くならないじゃない。着ないってことは無いし。パリの友達によく言われるんですよ。「日はいいよ。お風呂入る習慣があるから。毎日着替えなきゃいけないし」って。日本て前の日と同じ格好で行くと、「あれ?」って言われる風潮があるでしょ。日本はどっちにしたって新しいものを買っていかなきゃいけない。マンスリー用の洋服を買わないといけない。あと四季がある。春夏秋冬に合わせた服を買わなきゃいけない。一番洋服を変えやすい状況にあるのが日本なんだよね。汗をかかない、汗が染みない、防臭とか、機能的なものを開発出来る状況にあるのも日本。つまり日本独自の季節と風習からくる、日本オリジナルのファッションスタイルみたいなのがある。そこが非常にアパレル産業を支えてきた。だけど行き過ぎた。これからの我々がやらなきゃいけないことっていうのは、枯渇していくであろう天然素材を守ることだと思う。生産する95%くらいのアイテムがコットン、ウール、シルクなどの天然素材から作られるから。

天然素材が枯渇した時に、我々は何を素材として使っていくのか。それが問題。長ケ部社長はどう思いますか。

長ケ部良一社長(以下O):海外の方から「日本の町はきれいですね」と言われることがあります。それってそうでありたい自分達がいて、だから当たり前のごとくそうであろうとする。人間、一定以上の状態にいれば、つまり衣食足りれば礼節を知る訳で、そういう意味でCSR、社会貢献が話題に上るのだと思います。

手塚社長と知り合って「現在の衣料品業界の問題、特にCSR上の問題」についてよく話題にします。このままでいいのだろうかと。我々自身が、何十年もこの業界に携わってきたもの自身が立ち上がって現在抱えている問題を取り上げていく必要があるだろうと話し合っています。具体的にはリサイクルとリユースをムーブメントとして作り出していくことに尽きるのですが、調べてみると過去にも何回か政府の補助を受けながら業界として対応しようとしたことは有ったのですが、現状で言えばすべて活動中止状態になっています。それは、リサイクル、リユース共になかなか利益に繋がらないことが大きな原因のようです。利益に繋がらないだけではなくて実に手間が掛かるということです。企業という形で社員に給料を払い、株主に利益の配当をし、あらゆるステークホルダーに満足してもらうことを目指している企業経営者からすると利益を出し難い分野への一定以上の投資は非常に難しい訳です。問題があることは分かっていてもそこに手を付けるのは非常に難しいわけです。私の知っている会社でリユース、リサイクルに取り組んでいる会社があります。自社ブランドの商品ではありますが、リユースして一定以下の値段で販売しています。その会社に聞いてもこの事業だけで採算を取るのは難しくやはり赤字だということです。

2/3「【ファッション再生】“機械・ファッション大国である日本”イエリ社長×兼松繊維社長」に続く
編集部
  • 左から兼松繊維社長・長ケ部良一氏、イエリデザインプロダクツ社長・手塚浩二氏
  • イエリデザインプロダクツ社長・手塚浩二氏
  • 兼松繊維社長・長ケ部良一氏
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