3月23日から24日に掛けて、六本木地区にてアートのオールナイトイベント「六本木アートナイト」が開催された。2009年の第1回から、4回目の開催となった今回は、参加アーティストは100名を超え、プログラム数は過去最多となった。
今回からイベントに統一感を持たせるため、アーティスティックディレクター制を導入。以前から越後妻有アートトリエンナーレや新潟の水と土の芸術祭で「場」の力を引き出す作品作りやパフォーマンスを行ってきたアーティストの日比野克彦がディレクターに就任し、数名のキュレーターを指名した上でアーティストの選定を行った。
開催テーマを「TRIP→今日が明日になるのを目撃せよ。」と題し、六本木の街を大きな「海」に例えて点在する色とりどりのインスタレーションやパフォーマンスを「港」に据え、アーティスト達が制作した「船」が、六本木の「海」と作品がある「港」を回遊するというディレクションを実行。すべては、陸前高田市の杉で作った炭をたいて、一晩中六本木ヒルズアリーナで灯りをともし続ける日比野作品の「灯台」を中心に構成された。
「海」はAからDの4地点に大別される。Aゾーン(国立新美術館周辺)では淺井裕介「混生系譜丸」、國安孝昌「往く鳥の御座」、岩井優「ホワイトビル・ウォッシング」、柴田祐輔「クリーニング・ディスコ」などが登場。柴田の作品は老舗クリーニング店を一夜限りのディスコにするというパフォーマンス作品だったが、あまりに人が集まり過ぎたため、すぐ中止となった。
Bゾーン(六本木ヒルズ)はメインプログラムを主に開催。フネプロ「六本木造船所」、ライゾマティクス×山川冬樹「シンクロ丸」、大巻伸嗣「Liminal Air Space-Time/Wave」など、六本木ヒルズのいたる所で様々なアートが行われた。シンクロ丸では、山川が自らの心臓の心拍速度や強さを制御し、ライゾマが作った音と光りに還元するパフォーマンスを演じた。深夜の寒い中、圧巻のパフォーマンスを披露。
Cゾーン(東京ミッドタウン)ではカトリーヌ・バイ制作・演出「ブランシュ・ネージュ」、デイジー・バルーン「アップルベアー丸」、G-Tokyoなどに多くの人が集まった。ブランシュ・ネージュは白雪姫達が調練を行うというインスタレーション。ミッドタウン中を移動しながら行われた。
Dゾーン(六本木交差点・商店街)は地域密着型。北澤潤「サン・セルフ・ホテル」、鷺山啓輔「白い紙船」など商店やビル内に作品を設置。「白い紙船」は、日比野がアートナイトの「新聞社」として起用した芋洗い坂に構える「水産経済新聞社(スイケイ)」前にて展示。スイケイは本イベント情報紙「芋洗い坂新聞」を特別に発行している。
また、六本木の商店とアートナイトをつなぐことを目的に、事前応募で当選した一般客とアーティスト2名がテーブルを囲んで「飲み会」形式でフリートークをする座談会企画「六本木夜楽会(ろくほんもくよらくえ)」が開催。猪子寿之×八谷和彦、後藤繁雄×鈴木理策、タナカノリユキ×津村耕佑、会田誠×大宮エリーなど11組が飲食店でファンと交流。深夜2時から始まった会田と大宮の回は終始リラックスした雰囲気で朝まで盛り上がった。
今回のアートナイトについて、「森ビルは、六本木ヒルズをオープンした2003年より“アートの磁力による六本木の町作り”を推進してきた。その後国立新美術館、サントリー美術館、21_21デザインサイトが開館。ギャラリーも複数出店し、六本木のアートの街としての印象が強まってきた。今年は奇しくもG-Tokyoとアートフェア東京、東京ファッションウィークの日程が重なり、複数イベントが同じ週末に開催された。更に我々は2月に行われたシンガポールのアートフェア『アートステージシンガポール』にアートナイトブースを出展し、海外からの集客もアプローチしている。これらの効果で、集計に時間が掛かるのでまだはっきりとした数字は公開できないが、来場者は前回の70万人を超す見込みだ」と森ビル広報の渡邉茂一氏は語る。